ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■シリアナ、ロード・オブ・ウォー、エミリー・ローズ、ルー・サロメ、メルキアデス・エストラーダ、ディック&ジェーン、チキン・リトル
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『シリアナ』“Syriana”
麻薬取り引きの実態を描いた2000年の『トラフィック』で、
アカデミー賞脚本賞を受賞したスティーヴン・ギャガンの脚
本、監督による中東情勢を巡って暗躍するCIAの姿を描い
た作品。映画は、元CIA職員のロバート・ベアの著作に基
づくが、物語はフィクションとされている。
『トラフィック』のスティーヴン・ソダーバーグ監督が主宰
するセクション8の製作で、同プロダクションの共同主宰者
のジョージ・クルーニーが主演と、ソダーバーグと共に製作
総指揮も務めている。
物語の舞台は中東のとある小国。そこでの諜報活動に従事し
ていたバーンズは、指令された武器商人の暗殺には成功する
ものの、売り渡した小形ミサイルの行方が判らなくなり、そ
の報告のため本部に戻ってくる。しかし、そこで彼には別の
任務が与えられる。
一方、スイスに本社を置くエネルギー商社に務めるブライア
ンは、とあるきっかけで中東の小国の王族に近付き、その伝
で大きな利権を得ようとしていた。そしてアメリカでは、大
規模な石油企業の合併を巡ってその間に不正がないか調査が
始まっていた。
この3つの物語と、他に地元のテロリストの動きなどが、互
いにほとんど接触することもなく進んで行く。従って相互の
関係はよく判らないし、本当は何が行われていたのかは、映
画だけではほとんど判然としないものだ。
つまり、その判断は観客の想像に委ねられるのだが、アメリ
カの国益を守ると称して張り巡らされた非情な陰謀の存在は
明白に描かれている。しかもその是非は、最後の主人公の行
動が明らかにしているという作品だ。
因に題名のSyrianaとは、ワシントンのシンクタンクなどで
「中東再建のための仮説」という意味合いで実際に使われて
いた用語だそうだ。
しかしこの言葉は、Siria→Syrian→Sirianaと語尾変化した
ものと考えられるもので、その言葉で考えるとこの用語は、
「シリア化する」というような意味にも取れる。ところが実
際は、シリアという国は親米の国ではない。
従ってこの言葉が使われる理由も判然とはしないものだが、
ただし最近になって、シリアの反米の指導者的存在だった人
物が、突然執務室で自殺したというような報道を見ると、か
なり深い意味合いを感じるのは僕だけではないだろう。
なお、本作はシリアを舞台にしたものではなく、劇中シリア
という国名は出てこなかったと思われる。
また本作は、アメリカでは12月第1週に全米6館だけの限定
公開で封切られたが、その興行成績が1館当り11万ドル以上
という驚異的な数字となったもので、アメリカ人の関心の高
さも伺わせたものだ。
『ロード・オブ・ウォー』“Lord of War”
国際的な武器商人の暗躍を描いた作品。『ガタカ』『シモー
ネ』のアンドリュー・ニコルの脚本監督作品で、ニコラス・
ケイジが主演している。
主人公は、旧ソ連のウクライナで生まれ、幼い頃にユダヤ人
に偽装して一家でアメリカへ移住。その後、父親はユダヤ教
にはまり地道な生活をしていたが、ある日、銃器の売買で自
分の商才に気付いた主人公はイスラエルに飛び、放棄された
兵器の転売で富を得る。
やがてソ連邦の崩壊により、故郷ウクライナでは軍用ヘリコ
プターを含む大部隊を組織できるほどの兵器を手に入れ、富
を膨らませて行く。そして、その富に飽かして美しい妻も娶
り家族にも恵まれる。一方、彼を執拗に追い続ける取り締ま
り官の追求もあるが…
そして彼の行動の過程には、もちろん危険なことも数知れず
あるが、彼の使命は、現在全世界の人口12人に1丁と言われ
る銃器の数を、1人1丁にすることだ!!
上で紹介した『シリアナ』に続けて国際政治の裏で暗躍する
人物たちの物語だが、本作ではそれをかなり戲画化して描い
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12月14日(水)
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