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On the Production
by 井口健二
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■ピーナッツ、スタンド・アップ、バトル7、Mr.&Mrs.スミス、イヌゴエ、ホテル・ルワンダ
仕掛けられているのには、さすがハリウッド映画という感じ
がした。
以下ネタばれあります。
それから、クライマックス近くの2人の会話は、多分某アカ
デミー賞受賞作の台詞をそのまま使ったものだと思われる。
それまで気をつけては見ていなかったが、思い返してみると
他にもいろいろあったような気もする。その作品へのオマー
ジュなのだろうか。
『イヌゴエ』
犬の言葉が理解できるようになった臭気判定士の主人公を巡
る物語。
主人公は臭気判定士の肩書きを持ち、悪臭公害対策協会に所
属して住宅の臭気の判定や、地域住民の苦情対策を主な仕事
としている。そんな主人公が薬品メーカーの芳香剤の実験に
駆り出され、ある匂いを嗅がされたことから物語は始まる。
その日、その匂いを嗅いで昏倒した主人公は自宅で寝かされ
ていたのだが、その間に故郷での同窓会に行くという父親が
犬を置いていき、やがて目覚めた主人公には、その犬の声が
言葉として聞こえるようになっていたのだ。
そしてその犬のおかげで、臭気の源を発見できたり、犬を連
れた女性と近づきになれたりもするのだが、同時にいろいろ
なトラブルにも巻き込まれることになってしまう。こうして
平凡だった主人公の生活に変化が生まれるが…
匂いの元はラヴェンダーではないけれど、何となくそこから
ヒントを得ているような気もする作品だ。それはともかくと
して、映画は、それ以外の部分では極々市井の出来事が普通
に進んで行き、まったく等身大の無理のない物語に仕上げら
れている。
実は映画を見るまではあまり期待していなかった。犬の言葉
が判るといっても、ドリトル先生を始めいろいろな物語があ
る訳で珍しくもないし、それをうまく捻れるほどのセンスは
あまり期待できるとも思えない。
という感じで見に行ったのだが、映画を見ていて感心したの
は、実にいろいろな問題がうまく話の中に織り込まれている
ことだった。
それは家庭内の臭気をきっかけにして、ゴミの片づけのでき
ない主婦の問題であったり、下水に含まれる微生物の話であ
ったり、さらには幼児虐待や犬と人間の信頼の物語であった
りもする。そんないろいろな問題がさりげなく、見事に取り
込まれていた。
そして提示される問題の多くは映画の中で解決される訳でも
ないのだが、そういうことは抜きにして、描かれた問題提起
が今の日本のある側面を見事に描き出しているようで、見て
いて納得してしまう作品だった。
なお試写会はヴィデオで行われて、画質などには多少不満が
あったが、物語的には納得できるものだったし、犬の台詞の
ユーモアも含めて面白い作品だった。
『ホテル・ルワンダ』“Hotel Rwanda”
アフリカのルワンダで起きた部族間抗争によるの大量虐殺を
背景にした実話に基づくドラマ。今年のアカデミー賞で主演
男優、助演女優、脚本の3部門の候補になった。
1994年の物語。ルワンダ国民は主にフツ、ツチの2つの大き
な部族で構成されているが、彼ら共に黒人で西欧人には区別
がつかず、同じ言語を喋り、同じ宗教で、部族間の結婚も頻
繁に行われていた。
ただし植民地としてベルギーが支配していた頃には、どちら
かと言うとツチの人々が厚遇され、人数的には多いフツの人
たちは冷遇されていた経緯はあったようだ。そんなわだかま
りも遠因となり、ベルギーからの独立が成った後、部族間の
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11月29日(火)
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