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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(アジアの風・日本映画ある視点)
にも子育ての問題などもうまく織り込まれていて、中々良い
感じの作品だった。
ただこの作品も邦題はちょっと変な感じで、ハングルの原題
に添えられた漢字はただ『恋愛』だけのように見えたが、内
容も邦題から想像するような軽薄なものではないし、英語題
名は邦題と同じになっているが…一体誰がこの邦題をつけた
のだろうか。
<日本映画・ある視点>
『ベルナのしっぽ』
1981年をスタート点として、バリアフリーなど言葉もなかっ
た時代に盲導犬との生活を実践した女性の物語。
20代になってから失明し、盲人の男性と結婚、生きた証とし
て誰の助けも借りずに子育てすることを目指し、そのために
盲導犬を使うことにするが、彼女は大の犬嫌いだった。
盲導犬と一緒では電車に乗ることも、区役所の喫茶室に入る
こともままならなかった時代。そんな時代を一歩一歩個人の
力で改革して行く。それは本当に大変なこと。そんな芯の強
い女性の姿を白石美帆が中々の好演で描いている。
実際、彼女の行動は傍から見てもやり過ぎという部分もない
訳ではないが、その時代にこうした人たちがいたからこそ、
今ようやくバリアフリーという言葉が一般的になってきた。
そんなことも考えさせられた。
犬の健気さや人間より先に老いてしまう盲導犬の現実なども
丁寧に描かれ、もちろん感動的な話ではあるが、敢えてお涙
頂戴に持っていっていないことも、すがすがしく感じられる
作品だった。
『ベロニカは死ぬことにした』
主人公は、自殺を試みて大量の薬物を飲む。しかし一命を取
り留め、ちょっと異様なサナトリウムで目を覚ますが、彼女
は薬物の影響で死期が迫っていると宣告されてしまう。
一方、そのサナトリウムには、精神病の患者が多く収容され
ているのだが、中には治療は済んでいるのに退院を希望しな
い患者や、芸術的な才能を発揮している患者もいた。
そして彼女は、そんな患者たちと共に最後の時を過ごすこと
になるのだが…
パウロ・コエーリョ原作のベストセラーの映画化。海外の原
作を日本を舞台に翻案したもので、登場人物は皆日本名、従
ってベロニカは登場しないのだが、敢えて原作の題名のまま
と言うのも面白いところだ。
映像もCGIやVFXも織り込むなど、いろいろ凝ったもの
で、原作を知っている人の目にどう映るかは判らないが、原
作を知らない僕は楽しむことが出来た。
主演は真木よう子だが、脇役の風吹ジュン、中島朋子らの怪
演ぶりも楽しかった。
ということで、今年はコンペティション部門全作品15本と、
アジアの風部門12本、日本映画・ある視点部門2本を見るこ
とが出来た。ある視点部門に関しては事前に2本を試写で見
ているので、映画祭のコンテストに関連した部門の作品は、
全部で31本見たことになる。
因に、今年の映画祭ではアジアの風部門は37本、ある視点部
門は11作品が上映されているから、この両部門に関しては3
分の1しか見られなかった訳だが、僕はコンペティションを
優先して見ているので、これは仕方がないところだ。
しかし、アジアの風部門ではチケットの手配に失敗して見る
ことが出来なかった作品もあり、その点では少し残念にも思
っている。と言うのも、昨年までは前日に申し込めたチケッ
トが、今年は当日分のみとなって、このため手配がままなら
なかったこともあるもので、この点の改善というか、昨年ま
でのやり方に戻してもらいたいと思っているのは、僕だけで
はないだろう。
それはさておき、今年のコンペティションは日本映画初のグ
ランプリ受賞で幕を閉じた訳だが、僕は先に書いたように、
中国作品2本の方を買っていた。と言っても受賞作の完成度
の高さが群を抜いていたことは確かなことで、この受賞に文
句を付けるつもりはない。
ただし、主演男優賞については、受賞した本人も驚いていた
ようだが、主演者でない人に贈られたのはどうしたものか、
一昨年にも同様のことが起きたが、この辺の主演者の規定は
もう少し明確にしてもらいたいところだ。とは言っても、今
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11月12日(土)
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