ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■誰がために、風の前奏曲、セブンソード、ある子供、理想の恋人.com、イド
られるものになっているし、そこでもがいている若者の実体
も見えてくる。                    
確かに若者が幼児性から脱し切れないのは、彼ら自身だけの
問題ではなく、それの直視して受け入れる体制を整えない大
人社会の問題でもあるのだろう。プレス資料にも書かれてい
たが、そんな問題提起を突きつけられた気もした。    
しかし、本来なら内部処理で片付けなければならないはずの
失政のつけを、民営化と称して国民の我慢に押しつけようと
している、そんな自分の国の政府の状況を見ていると、日本
ではこの映画が提起した問題は当分解決されそうもないのが
現実だろう。                     
その間に日本の社会が、本当に底辺から崩壊してしまわない
ことを祈るばかりだ。                 
                           
『理想の恋人.com』“Must Love Dogs”       
ダイアン・レイン、ジョン・キューザックの共演で、30代半
ばで結婚に破れ、恋愛に臆病になってしまった男女の巡り合
いを描いたロマンティック・コメディ。         
邦題の通り、この出会いにはインターネットの出会い系サイ
トが利用される。そして原題は、そのサイトの自己紹介に掲
載する「犬好きであること」という相手に対する条件を表す
もの。日本のインターネットで出会い系というと、何か淫靡
なものを感じてしまうが、離婚王国アメリカでは、この種の
サイトが実用的に使われているようだ。         
レイン扮する主人公は、30代半ばで夫から離婚を言い渡され
た幼稚園の先生。めげ込んで何もできない彼女に、大家族の
姉妹弟がいろいろな男性を紹介してくれるのだが、なかなか
その気になれない。そして遂に姉が身代わりでサイトに登録
してしまう。                     
一方、キューザックが扮する男性も離婚の痛手から立ち直れ
ず、趣味が高じた芸術的な手作りボートの製作に没頭してい
る。しかし友人からサイトに載っていた彼女のページを渡さ
れ、その気になり始める。               
これに、クリストファー・プラマー演じる妻に先立たれた彼
女の父親の行状や、彼女に言い寄る園児の父親、さらに次々
現れるサイトからの応募者などが、いろいろなコメディを展
開して行く。                     
何10年も映画を見続けていると、若い俳優が成長して行く姿
を見るのも楽しくなってくる。ダイアン・レインもそんな女
優の一人だが、それこそ美少女と呼ばれた時代から考えると
『パーフェクトストーム』の漁師の妻や、『トスカーナの休
日』の主人公など、最近の作品で見る彼女の姿は自然で、実
にうまく成長したものだと思う。            
しかも無理をせず、常に身の丈にあった役柄を選んでいる感
じなのも、観客として安心感があるし、当たるかどうかは題
材次第だが、外れはまず無いだろうという感じで、一種のブ
ランドのような感じで見ていられるものだ。       
それでこの作品も、元々大当たりするような題材ではないと
思うが、しっかりとした作りで充分に楽しめる作品になって
いる。脚本、監督は、1989年の“Dad”(晩秋)の評価が高
いゲイリー・デイヴィッド・ゴールドバーグ。      
本来はテレビの『ファミリー・タイズ』『スピン・シティ』
などの製作者でもあるゴールドバーグは、監督業は本当に気
に入った作品でしかやらないようだが、その2作目は偶然手
にした原作を映画化したものということだ。       
どこにでもいそうな人生の踊り場に留まってしまった男女。
ちょっとした後押しで次の人生に進んで行ける人たちを、そ
の一歩を踏み出すまでじっと暖かい目で見つめている、そん
な感じの物語。ごくありふれた人々の心の襞を見事に描いた
作品と言えそうだ。                  

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09月14日(水)
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