ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ランド・オブ・プレンティ、ARAHAN、大停電の夜に、アクメッド王子の冒険、モンドヴィーノ、親切なクムジャさん
だったと思われる。                  
制作者のロッテ・ライニンガーは1899年の生まれで、パウル
・ウェゲナーの映画に憧れて劇団に参加。そこでアニメーシ
ョン研究者のカール・コッホに紹介されて、彼の協力の許、
1919年に最初の短編作品を発表している。本作はその最高最
大の作品ということだ。                
現代の華麗なアニメーションと見比べると、モノクロの画面
は素朴で動きも滑らかではないが、初期の映画作家たちが、
試行錯誤しながら作り上げていった作品の暖か味や、作り上
げたときの感動が伝わってくるような作品だった。    
なお公開は、『ロッテ・ライニンガーの世界』と題されて、
彼女の初期・中期の短編作品から2本ずつが併映される。僕
はその内の『パパゲーノ』と『カルメン』を見たが、どちら
もちょっとひねった展開が面白く、作者の心情が見えてくる
感じがした。                     
因に、『パパゲーノ』の上映では左端にサウンドトラックが
写り込んでいたが、これは、元々のサイレントサイズでフィ
ルム面の一杯に撮影された画面に、後年そのままサウンドト
ラックを焼き込んだもののようで、その陰に映像があるのに
も歴史が感じられた。                 
                           
『モンドヴィーノ』“Mondovino”            
ワインの現状を描いた上映時間2時間16分のドキュメンタリ
ー作品。                       
発端は、アメリカの大手ワイン会社がフランスのワイン産地
に工場進出を目論んだことに始まる。これに対して地元は賛
成派反対派に分かれるが、結局反対派の共産党系村長が当選
して進出は退けられる。                
このときの論点の一つが、ワインのグローバル化とテロワー
ルと呼ばれる土地の味を守ろうとする運動。そして、グロー
バル化の推進者であるアメリカの会社と、テロワールを守ろ
うとする土地のワイン生産者たちの意見が述べられて行く。
映画制作者の考えは、全体としてグローバル化には反対の立
場のように感じられるが、推進者たちもフランクに意見を述
べているのは取材の仕方のうまさなのか、その辺のバランス
は非常に良い感じの作品だった。            
僕自身は、ナパヴァリーがアメリカのワイン産地であること
ぐらいしか知らない人間だが、それでも興味を持てるように
描かれていたのは見事と言える。中でもワインの評価に関す
る部分は、多少陰謀めいたものも見えて面白かった。   
また、イタリアトスカーナの数百年を誇るワインの歴史と、
一方、フランスのワイン生産者が意外とここ数10年の人が多
いことや、何年も寝かせる必要のあるワインと、速攻飲める
ワインの話なども興味を引かれるものだった。      
とは言え、2時間16分の上映時間はいささか長い。途中には
いろいろな雑多の映像を取り入れて興味を引っ張ろうとして
いるが、多少下品なものもあって、正直うまく行っていると
は思えない部分もあった。               
ただし試写会では、そのような部分でそれなりに笑い声も聞
かれたので、制作者の目論見は成功していると言えるのだろ
う。                         
ワインに興味のある人には、当然見ればいろいろな意見が生
まれるのだろうが、さほど興味のない僕のような人間にも、
見ているうちにそれなりに興味が沸いてくる。そんな感じの
作品だった。                     
                           
『親切なクムジャさん』(韓国映画)          
2000年『JSA』のパク・チャヌク監督が、『JSA』に出
演の女優イ・ヨンエと再び組んだ作品。         
主人公は、幼児誘拐殺人の罪で13年の刑に服し、出所してく

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08月31日(水)
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