ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ステルス、SHINOBI、ボム・ザ・システム、あそこの席、@ベイビーメール、TKO HIPHOP、ヘッドハンター
ルとしての携帯電話が見事に活用されていた。ちょっと前に
携帯メールを使った和製ホラーは登場しているが、作品の出
来はこちらの方が数段巧いというか、ちゃんと物語になって
いるものだ。                     
上記の作品と同様に主人公は女子学生で、これに担任教師ら
が絡むが、こちらはすでに主演も張っている俳優を配して、
そこそこの布陣で撮られている。因に、主演女優は13歳の時
のデビュー作で新人賞を獲得、相手役は『仮面ライダー』な
どに出演しているそうだ。               
物語のほとんどが校外で進むというのは、上記の作品とのバ
ランスを考えてのことなのだろう。試写は2作連続で行われ
たが、この辺の全体を通してのバランス感覚がちゃんと備わ
っていることにも感心した。              
それなりに見せ場のVFXも在るし、大作という作品ではな
いが、楽しめる作品だった。              
                           
最近のホラー作品は、ヴィジュアル的なショッカーが多くな
ってきている感じがするが、やはり精神的にじわじわと来る
チラーの方が恐いし面白い。しかしチラーの場合はそれなり
に脚本の出来も要求されるもので、その点でこの2作は水準
作だと感じた。                    
ただ、映画館で見るにはヴィデオ製作の画質がちょっと不十
分な感じで、そろそろHDも家庭用が出てきている時代に、
もう少し画質を上げて欲しいという感じもした。と言っても
最近見た他の何本かの作品よりはましではあったが。   
                           
『TKO HIPHOP』               
題名にはAsian Hiphopmovieという冠が付いている。東京渋
谷が舞台で、取り立てて他のアジア諸国の人たちが関る物語
でも無いのに、この冠は何ですかという感じもするが、映画
自体は最近の若者の風俗を捉えて、それなりの作品のように
感じた。                       
主人公は上京したての若者2人。その若者の1人がクラブで
人気MCの女にちょっかいを出し、そのMCにラップバトル
を挑むことになる。そして、もう1人と共にMCとDJの特
訓を始めるのだが。                  
これに、LA生まれでダンサー志望の女性や、オカマ、業界
の悪徳プロデューサー、ごろつきに悪徳刑事らが絡んで物語
が展開する。                     
映画では前半に描かれるMCとDJの特訓のシーンが、それ
ぞれプロを招いての作り込みなのだろうが、いろいろとテク
ニックなども披露されて面白かった。また、主人公の若者役
の1人が本来ダンサーだそうで、女性とのダンスシーンも良
い感じだった。                    
ところが何というか、悪徳プロデューサーやごろつき、悪徳
刑事の話が如何にもステレオタイプで、正直に言ってこれら
の部分はまったく買えなかった。            
これを製作者たちが現実の戯画化だと思っているならそれも
仕方がないが、もっと純粋に若者の姿を描いても、それなり
に素敵な青春グラフィッティが描けたのではないかと思った
ものだ。特に、悪徳刑事の話は映画の中でも浮いているし、
無駄遣いに感じた。                  
それよりも、ラップバトルのシーンやブレイクダンスのシー
ンは、それなりにタレントも揃えている訳だし、もっとじっ
くりと描いて欲しかった感じだ。            
同時期に見た『ボム・ザ・システム』にも悪徳刑事は出てき
たが、あちらはもっと大きな背景を描いていたから様になっ
ていた感じがする。それに比べると本作はもっとこぢんまり
としたもので、その分もっと若者自身に目を向けた物語が欲
しかった。                      

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08月14日(日)
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