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On the Production
by 井口健二
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■キャプテン・ウルフ、真夜中のピアニスト、蝋人形の館、800発の銃弾、ヘイフラワーとキルトシュー、ふたりの5つの分かれ路
僕自身は次男だが、兄は年が離れていてすぐ下に妹がいた。
だから、境遇的にはヘイフラワーに似たところがあるが、僕
の妹はこんなに我儘ではなかったから、妹のせいでこんな風
になったことはないと思う。
しかし、何時も良い子でいることには何となくそう躾られて
いた感じがあって、確かにこんな風に切れてしまいたいと思
ったことはあったと思う。そんな気持ちで見ていると、この
姉の姿は本当に愛しくなってしまうものだ。
弟妹というのは、疎ましくもあるが、愛しくもあるもので、
これは独りっ子の多い現代では通用しなくなってしまう感情
かも知れないが、それを知っているものには、本当に愛しい
と思える作品。世のお兄さんお姉さんに捧げたい作品だ。
『ふたりの5つの分かれ路』“5×2”
『8人の女たち』『スイミング・プール』などのフランソワ
ーズ・オゾン監督の2004年作品。
オゾンは1998年の長編第1作以来毎年1本ずつ新作を発表し
ている。僕は最近の3作しか見ていないが、どれも女性が主
人公で、しかもかなり芯の強い女性が描かれている感じがす
る。この作品も、主人公は男女のカップルだが、やはり女性
の方が中心の映画だ。
物語は、離婚調停を進めるカップルの姿から始まる。やがて
調停は完了するが、そのまま2人でホテルに行ってしまうよ
うなカップルだ。つまり、憎くて別れたのではないというこ
と。ではなぜ離婚するのかというと、それが時間を遡って検
証される。
2人には子供がいるが、その子が幼い頃、出産の時、結婚式
の夜、そして出会いの時。これに最初のシーンが加わって5
つの分かれ路となるが、確かに男女の関係ってこんなものか
も知れないと思わせるような微妙な関係が描かれる。
そしてそれぞれの時に別の路が選ばれていたなら、多分2人
の人生は全く別のものだったのだろう。でも、だからといっ
て2人の歩んだ路が、結局は離婚という結末であったとして
も、それはそれで満足だったのではないか、そんなことも思
わせる。
僕自身、結婚生活がそろそろ30年近くなってくると、確かに
このような分かれ路はあったのかなあと思えてくる。日本の
社会はこの物語ほど開放されてはいなかったと思うし、こん
なに具体的なことが起こるような社会でもないと思うが、精
神的には…という感じだ。
だからこの映画には、それなりの共感が持てるというところ
だろう。その意味では、オゾン監督の前の2作よりも身近に
感じられる作品だった。
なお映画では、時間の移動のタイミングごとに往年のポップ
スが流され、ボビー・ソロの『頬にかかる涙』、ウィルマ・
ゴイクの『愛のめざめ』、ザ・プラターズの『煙が目にしみ
る』など懐かしい曲を聞けたのも嬉しかった。
07月31日(日)
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