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On the Production
by 井口健二
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■シンデレラマン、せかいのおわり、マダガスカル、8月のクリスマス、ハービー 機械じかけのキューピッド、頭文字D
まあそういう設定を考えれば、スラップ・スティックとして
認められる範囲の荒唐無稽さだろう。          
なお映画は、NASCARの全面協力の下に製作され、実際
に2004年9月5日にカリフォルニア・スピードウェイで行わ
れた「ネクステイル・カップ・シリーズ」のレースに出演者
たちが参戦して撮影が行われている。そのレースの雰囲気も
楽しめる仕組みだ。                  
また、ジェフ・ゴードンやジミー・ジョンスン、ケヴィン・
ハービックらのNASCARのトップ・ドライバーがカメオ
出演しているのも、ファンにはプレゼントだろう。    
それから、主演は63年型ワーゲンだが、最新型が登場するエ
ピソードも良い感じで挿入されていた。さらに映画のプロロ
ーグでは、過去のシリーズの名場面がダイジェストされてい
て、中で『ナイトライダー』が登場したのには笑えた。  
                           
『頭文字D』“頭文字D”               
しげの秀一原作の人気コミックスを、『インファナル・アフ
ェア』のアンドリュー・ラウとアラン・マック監督で映画化
した香港作品。                    
脚本、監督、撮影などを全て香港スタッフで固めて、出演者
もヒロイン役の鈴木杏を除いてはほとんどが香港俳優。日本
公開は全て吹き替え版で行われるようだが、鈴木杏以外の主
人公たちのせりふは広東語で撮影されている。      
しかし舞台は原作通りの群馬県で、主人公たちの役名も全て
日本名。舞台を香港に置き換えると物語が成立しないという
ことだったようだが、それにしても、口元の合わない吹き替
えの画面に「藤原とうふ店」など書かれた車が出てくると、
何とも不思議な感覚だ。                
ただし鈴木杏のせりふは日本語で、彼女だけ口元が合ってい
るのもまた不思議な感じだった。とまあ、かなり違和感を抱
えて映画はスタートするのだが、これが榛名(秋名)の山路
での走りのシーンになると、そんな違和感は一気に吹き飛ん
でしまう。                      
このカースタントは、日本の高橋レーシングが担当して撮影
されているが、ドリフト走法などの走りの描写だけでなく、
細かいカット割りやマルチ画面などの映像演出で、見事に躍
動感一杯のシーンに仕上がっている。一部にちょっとVFX
の掛ったシーンはあるが、ほとんどが生撮りで、その迫力も
満点と言えそうだ。                  
スタント自体は日本人が演じているのだから、日本映画の感
覚になりそうなものだが、その見せ方のテクニックなどが、
明らかに日本映画とは違う香港映画の感覚になっていた。こ
の辺がさすがアンドリュー・ラウの演出という感じだ。  
ラウは、『インファナル…』で一躍トップクラスの監督にな
ってしまったが、それ以前の『風雲ストームライダーズ』や
『中華英雄』では、VFXの多用などの見せ場はあるものの
どこか中途半端で泥くさい感じがしたものだ(それが魅力で
もあったが…)。                   
しかし、その後の『インファナル…』で見せた洗練ぶりは目
を見張る感じで、その洗練された映像感覚がこの作品にも大
いに発揮されている。といっても、香港映画らしい泥くさい
ドタバタもちゃんと演じられていて、その辺も楽しめるとこ
ろも良い感じだ。                  
ストリートレーシングを描いた映画では、ヴィン・ディーゼ
ル主演の“The Fast and the Furious”が先鞭を付けたが、
本作にはそれに劣らぬ迫力が感じられた。本家はこの秋、東
京を舞台に第3作が作られる予定だが、この迫力に勝てるか
どうか。面白くなりそうだ。              

06月30日(木)
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