ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459640hit]
■肌の隙間、トラブルINベガス、楳図かずお恐怖劇場、ハッカビーズ、0:34、ヒトラー、逆境ナイン、about love
では多数の市民に犠牲者を出したこの町で、ロシア人がドイ
ツ兵に扮して撮影が行われたということでは、歴史の重みも
感じさせる。
正直に言って、上映時間を感じさせない構成と演出で、映画
としての出来は優れた作品だと思う。また、当時の状況から
考えて、映画の中でヒトラーにへつらうような発言が数多く
発せられるのは、歴史的な事実として仕方のないところだろ
う。
しかし、映画の中で、アウシュヴィッツを正当化するヒトラ
ーの発言がことさら描かれたり、ドイツ国民も被害者だった
とするような描き方が強調されるのには、やはり疑問を感じ
る。ヨーロッパで批判が強かったのも頷けるところだ。
また、最後に元秘書の女性の映像も登場するが、その中での
罪を感じていなかったという発言には、正直神経を逆なでさ
れたような感じも持った。戦時の罪には問われなかった彼女
は、後年アウシュヴィッツを訪れて、初めて自分の罪深さに
気付いたということだが、結局そうでもしなければ自分たち
のしたことも判らない、そんな高慢さも感じられた。
国家としてのドイツは、戦後補償のやり方などを通じて、日
本以上に戦争への罪の意識を持っていると思っていたが、民
間レヴェルでは、決して万人がそうではないということのよ
うだ。まあ、それ以下の日本人が言えることではないが。
『逆境ナイン』
島本和彦の原作漫画を、『SMAP×SMAP』等の構成作
家・福田雄一が映画初挑戦で脚色し、昨年監督デビュー作の
『海猿』が話題を呼んだ羽住英一郎が第2作として手掛けた
作品。
部員はぎりぎり9人で、勝知らずの高校野球部が、校長から
勝てないなら廃部の条件を突きつけられ、その逆境の中で甲
子園を目指して進んで行く姿を描いた青春ギャグドラマ。主
人公の不屈闘志を玉山鉄二、マネージャーの月田明子を掘北
真希が演じる。
何しろ1戦でも負ければ廃部という条件の中で、名門校に練
習試合を申し込んだり、部員が赤点で試合日に追試となった
り、と常識では考えられない逆境に次々に見舞われ、それを
また奇想天外な手段で乗り越えて行く。
そして極め付きは、9回裏112対0の大ピンチ、しかも動け
るのは主人公だけという絶体絶命の状況で、主人公はこれを
如何にして克服するのか…
『海猿』は見ていないが、それなりに感動的な正統派のドラ
マだったと聞いている。その監督が次に選んだ作品がギャグ
漫画の映画化というのは…他にも企画は目白押しだったろう
と想像されるところで、これは確かに冒険だろう。
しかし作り手の熱意というのはこういうところに発揮される
もので、本当に作りたかったのはこれだ…というような感じ
が、見事に伝わってくる作品だった。多分『海猿』は、この
作品のための足掛かりだったのだろうな…とも思わせる。
この手のギャグ作品で、VFXの多様は定番になってきてい
るが、クライマックスの試合シーンやモノリスの飛来シーン
以外にも、前景と後景がスローモーションの間で主人公がノ
ーマルスピードでのたうち廻っているような、ちょっとした
描写にセンスを感じた。
漫画原作ということで、演技は大げさだし、出演者にも素人
同然の人もいたようだが、全体のトーンは統一されていて、
見ていて気になることはなかった。その辺の監督の手腕は確
かなように思える。
学園ギャグ作品では、前に『魁!!クロマティ高校』を紹介し
ているが、ちょっとマニアックな『クロ高』とは対極の、真
っ当な線を狙った作品で、こういう作品が正当に評価される
ことを期待したいところだ。
『about love』“関於愛”
東京、台北、上海を舞台に、異邦人と現地の人の交流を描い
た3つの物語からなるオムニバス映画。それぞれの街と恋の
物語を、東京=下山天、台北=易智言、上海=張一白という
3人のそれぞれ現地の監督が演出した。
物語は、相互に少しずつの繋がりはあるが、それぞれは独立
しており、それぞれのシチュエーションに合わせたストーリ
[5]続きを読む
05月14日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る