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On the Production
by 井口健二
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■第80回
 因に、フィンチャーとワーナー、パラマウントでは、先に
“The Curious Case of Benjamin Button”という作品の計
画があったが、この作品がVFXの多用で1億5000万ドルの
大型予算に膨らみ、一時中断となってしまった。今回はそれ
に代って発表されたもので、まずはこの作品を手掛けて、再
度挑戦ということになるのだろうか。
        *         *
 一昨年公開の『ラスト・サムライ』では明治初頭の日本を
ファンタスティックに描き出したエド・ズィック監督が、今
度は中世のスペインを舞台に、さらにファンタスティックな
物語を映画化する計画を、ワーナーから発表した。
 この計画は、ガイ・ガヴリエル・カイ原作の“The Lions
of Al-Rassan”という小説を映画化するもので、物語は2人
の戦士の王子と、1人の女性の医者を巡るもの。さらに物語
には魔法使いも登場するなど、本格的なファンタシーが展開
することになるようだ。
 なお、この時代のスペインはムーア人の支配下にあり、そ
こではイスラムとカソリック、それにユダヤ教が宗教の地盤
を築こうと争いを繰り広げていた。その事実を背景とした物
語だが、原作には魔法の要素もかなり多く描かれているとい
うことで、ズィック自身は「そのブレンドの仕方が絶妙で、
これは歴史ドラマを描く上での新たなアプローチとなる」と
語っているが、日本を舞台に架空の戦いを描いた前作以上に
挑戦的な作品になりそうだ。
 脚色は、2000年にペネロペ・クルスのハリウッド進出作と
なった『ウーマン・オン・トップ』を手掛けたヴェラ・ブレ
イシ。因にブレイシはアン・リー監督の『恋人たちの食卓』
をロサンゼルスを舞台にリメイクした“Tortilla Soup”の
脚本を手掛けている他、歴史ものでは映画化は実現していな
いが、キリストの処刑者ポンティウス・ピラトとガリレオの
伝記映画の脚本も書いているそうだ。
        *         *
 USCの映画コースを卒業したバリー・L・レヴィの執筆
による“Vantage Point”という脚本を、6桁($)から最
高100万ドルの契約金でコロムビアが獲得し、『XXX』な
どを手掛けるニール・モリッツの製作で映画化することが発
表された。
 この作品は、アメリカ大統領の暗殺計画を5人の異なる視
点から描くというもので、米誌の報道ではこのような構成を
『羅生門』スタイルと称していた。また、この映画化の監督
に、1998年のIRAのテロ攻撃により29人が殺された事件を
イギリス、アイルランドの共同製作で描いた“Omagh”とい
う作品で、トロント映画祭の受賞を果たしたピート・トラヴ
ィスを起用することも発表されている。
 なお製作のモリッツは、ロブ・コーエン監督によるアクシ
ョン大作“Stealth”が今年の夏ソニーから公開される他、
『XXX』の続編“XXX: State of the Union”の製作も進
めている。
        *         *
 『ポーラー・エクスプレス』で採用した新技術パフォーマ
ンス・キャプチャーに、「新たな可能性を信じる」と語って
いたロバート・ゼメキス監督が、新作の計画を発表した。
 発表された作品の題名は、“Beowulf”。10世紀に完成さ
れた長大な叙事詩に基づく作品で、この脚色を、『もののけ
姫』のアメリカ版なども手掛けている絵本作家のニール・ゲ
イマンと、『パルプ・フィクション』の脚本をクエンティン
・タランティーノと共同で執筆したロジャー・アヴェリーが
共同で執筆し、この映画化権を、ソニーと『ポーラー…』を
手掛けた製作者のスティーヴ・ビングが最高200万ドルの契
約金で獲得、監督をゼメキスが担当するというものだ。
 なお、元になる叙事詩は、JRR・トーキンが大学で研究
していたことでも知られ、“The Lord of the Rings”の発
想の基になったとも言われている作品だが、中ではベーオウ
ルフと名告る北欧の戦士が、グレンデルと呼ばれる巨大な怪
物と戦う姿などが描かれているということだ。

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02月01日(火)
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