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On the Production
by 井口健二
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■第17回東京国際映画祭(コンペティション+アジアの風)
ファンタシーならファンタシー、お笑いならお笑い、ホラー
ならホラーでそれぞれの目的を持って作ってくれないと、観
客はどう楽しんでいいのか混乱してしまう。作品の意図も見
えてこないし、全く何のために作られた作品なのか理解でき
ない作品だった。                   
ヴィデオ作品で画質が悪い上に、僕の見た上映ではスクリー
ン横の非常口のランプが消灯されず、見辛かったのも評価を
下げた。                       
                           
『ひとりにして』                   
2001年の映画祭で特別招待上映された『レイン』を監督した
パン兄弟の片割れ、ダニーの監督作品。双子のパン兄弟は基
本的には、オキサイドが監督で、ダニーは編集者だったはず
だが、本作はオキサイドの製作で、ダニーの監督となってい
る。                         
主演のイーキン・チェンが演じるのは双子の兄弟。兄は発展
家で今も海外で派手に暮らしているが、その陰に隠れた形の
弟は消極的で女性関係にも恵まれず、香港でゲイの人生を送
っている。                      
そんな弟の許に兄が帰国してくる。ところがその兄は、弟の
免許証を携帯して車を運転中に事故を起こし、弟と思われた
まま昏睡状態に…。そこにはゲイの恋人も駆けつけるが、本
物の弟は真実を告げることができない。         
一方、兄の携帯電話を受けた弟は、タイに住む兄の恋人に事
情を説明するが、彼女からはすぐに来いと呼び出され、兄の
身代わりで融資の交渉に臨むのことに…。しかしその交渉が
失敗して2人は窮地に立たされることになってしまう。  
双子の兄弟が製作する双子のお話ということになるが、演じ
るのは一人の俳優でその辺がちょっとややこしいが、これを
見事に演じ分けているのも見所だ。そしてこの双子の登場シ
ーンは当然VFXで描かれるが、パン兄弟は元々VFXも得
意な訳で、最後には大サービスも用意されている。    
ただ、映画の中では中国語とタイ語が使い分けられているよ
うなのだが、その区別が日本版の字幕で判然としなかった。
最近マルチ言語の映画が増えているが、その言語に意味があ
るときの字幕の付け方には工夫が要りそうだ。      
                           
『ビヨンド・アワ・ケン』               
東京国際映画祭でワールドプレミアとして公開された作品。
事前の資料では最後まで上映時間が未定という、本当にぎり
ぎりで完成された作品のようだ。            
恋人との関係も順調な女性のもとに、元彼女と称する女性が
現れる。彼女は恋人を奪い返すつもりはないが、インターネ
ット上に公開された自分のヌード写真を返して欲しいと要求
する。それは彼のパソコンに入っていると言うのだが…  
この要求に、自分も別れた後で写真を公開される恐怖を感じ
た主人公は、彼女に協力して彼の部屋に侵入することを試み
るが、消防士の彼はかなり防備が固かった。こうして彼に部
屋に侵入するための作戦が始まるが…          
彼と付き合う振りをしながら、彼の部屋への侵入方法を模索
する。その過程が、実に納得ずくで見事に描かれていて感心
した。その展開も実にスピーディでエンターテインメントに
満ちた作品だった。                  
しかも・・・という感じが、これも見事としか言いようのな
いもので、最近流行りの時間軸の入れ替えや、他の視点から
の映像も上手く決まっている感じだった。        
なお、最終的な上映時間は1時間40分になっていたようだ。

11月06日(土)
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