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On the Production
by 井口健二
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■エイプリルの七面鳥、ゴースト・ネゴシエーター、沈黙の聖戦、ソウ、恋に落ちる確率、赤いアモーレ、アンナとロッテ、約三十の嘘
男は、作家の妻との逃避行を望みながらも、元の恋人も忘れ
られない。しかし彼が元の恋人を再び愛したら、作家の妻の
記憶から彼の存在が消えてしまうことに…。そんな究極の選
択を迫られる物語。                  
男女の関係の一つの側面が描かれていると言えばそんなもの
だろう。この条件では、普通なら心変わりした男の方が、恋
人や女の存在を忘れてしまうのだろうが、それを逆にしてみ
たという感じだろうか、そんな特殊なシチュエーションが実
に上手く描かれていた。                
しかも本作では、登場する元の恋人と作家の妻を同じ女優が
演じているから、よけいに話が面白くなる。もちろん髪形な
ども大幅に変え、別人としての配役だが、見ている方として
は、男が女に弄ばれているような感じにも写る。     
しかし2人が別人であることの証が、彼に住んでいた部屋の
消失という物理的な変化で描かれる訳で、その辺の脚本の巧
妙さにも感心した。                  
撮影は全てコペンハーゲン市内で行われているが、空中写真
で登場人物たちの位置を示すなどの手法も使われ、その辺の
斬新さがカメラ・ドール受賞につながったようだ。    
なお、原題は上記の英語題名が使用されており、その意味と
登場人物の一人が作家という設定からは、別のテーマも読み
取れるが、それは物語の本質では無いと思う。      
                           
『赤いアモーレ』“Non ti Muovere”          
セルジオ・カステリット脚本・監督・主演、ペネロペ・クル
ス共演による2004年イタリア映画。           
主人公は、学会発表も行うベテランの医師。医師の妻はジャ
ーナリストで、彼は妻を愛してはいるが、避妊リングを装着
している彼女に距離も感じている。そんなある日、彼の車が
道端で故障し、彼は、自宅の電話を貸してくれた女性を襲っ
て強姦してしまう。                  
その女性は、移民の子で雑草のように生きている女。しかし
再び女性の元を訪れた医師は、彼女を愛し続けると同時に、
妻にも子供を持つことを希望する。そして…。      
物語は、主人公の娘が交通事故で瀕死の重傷を負い、主人公
の勤める病院に運び込まれるところから始まる。その発端以
後、時間を縦横に行き来して物語が綴られて行くが、その構
成が実に巧みで素晴らしかった。            
監督の妻でもあるマルガレート・マッツァンティーニ原作、
イタリアではベストセラーになり、文学賞も受賞した小説の
映画化。原作は、主人公の回想という形で描かれているよう
だが、映画化ではその時々の物語として描くことで、妻以外
の女性を愛した男と、そんな境遇でも男を愛し続ける女の至
上の愛が見事に描かれる。               
ヴァラエティ紙の評ではペネロペ・クルスの変貌ぶりが評価
されたようだが、女優ならこのくらいはやるだろうという感
じではある。しかし、かなりきついメイクで登場していた彼
女が、途中でその化粧を落とすシーンには、なるほどと思わ
せるものがあった。                  
                           
『アンナとロッテ』“De Tweeling”           
オランダの女性作家テッサ・デ・ローが1993年に発表したベ
ストセラー小説の映画化。               
第2次世界大戦前のドイツに生まれ、両親の死によって一人
はドイツの貧しい農家、もう一人はオランダに裕福な家庭に
引き取られた幼い双子の姉妹の生涯を描いた歴史ドラマ。 
ドイツで育った姉は自立し、オーストリア出身のナチ親衛隊
の将校と結ばれる。オランダに育った妹はユダヤ人との親交
も結び、音楽とドイツ語を学びながら、母国への留学を夢見
る。そしてナチス台頭の中、姉妹の運命は激動して行く。 

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09月14日(火)
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