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On the Production
by 井口健二
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■スパイダーマン2、MAY、クリムゾンR2、dot the i、ミッシング、エージェントC、ヴェロニカG、キッチンS、深呼吸、コールドM
のも見事な演出だった。
その他の配役では、ブランシェット以外は全員がアイルラン
ドの俳優で固められている。また、ダブリンの下町などロケ
ーション撮影はすべて現地で行われたということだ。
なお、もとスポーツ少女で女子サッカー選手だったこともあ
るという主人公が、子供とサッカーに興じるシーンなどで、
SHARPロゴ入りの赤のマンUのユニファームを着ている。こ
れが一種の時代の示唆のような扱いで興味深かった。

『キッチン・ストーリー』“Salmer fra kjøkkenet” 
1950年代にスウェーデンで実施された台所での行動調査とい
う実話に基づく物語。
映画の舞台はノルウェー。そのとある村にスウェーデンから
調査隊が訪れる。それは独身男性の台所行動を調査するとい
うもの。そして台所に調査用の足場が持ち込まれ、調査員が
被験者の行動を線図に記録することになる。
被験者は公募だったが、主人公は馬が貰えると騙され(実は
人形)て応募したもの。従って最初から行き違いが生じ、調
査には応じたものの非協力的。しかも、被験者と調査員は一
切の会話をしてはならないなど、厳格なルールが定められて
いた。
如何にも1950年代にありそうな(実際にあった)、頭でっか
ちで非人間的な調査の模様が描かれる。しかしことは人間同
士、徐々に交流が始まってしまうという物語だ。この物語を
48歳にして長編3作目というベント・ハーメル監督は、暖か
い目で描いている。
それにしても、スウェーデンとノルウェーの間でこんなにも
確執があったとは…。取り立てて対立がある訳ではないのだ
が、会話の端々などにそういう話題が出てくるところも面白
かった。因に、監督はノルウェーの人だ。
なお物語は、スウェーデンが左側通行だった時代もので、国
境での車線変更の様子なども描かれるが、中に登場するレト
ロなスウェーデン車がすべて左ハンドルというのはなぜなの
だろう。この方が安全だという台詞もあったようだが。

『深呼吸の必要』
沖縄で今も行われているキビ刈り隊を描いた青春ドラマ。35
日間で7万本のサトウキビを収穫するために本州から公募で
集まった7人の若者たちの行動が描かれる。
若者たちは、いろいろな思いを胸にここに集まってくる。中
には、観光気分で来ている者もいるが、ほとんどの思いは自
分自身の再発見というところだろう。そんな思いがぶつかり
合いドラマが生まれる
ということなのだが、日本映画のこの手の作品はどうしても
話が甘い。最近紹介した中ではアメリカ映画の『キャンプ』
が内容的に近く、あの作品だって十分に甘いものだったが、
それでももう少しは現実に近づいていたように思える。
とは言っても、これが日本映画の現状だから仕方がない。と
いうことでこの作品を見直すと、それなりにありそうという
か、それぞれ立場はここまで際立っていなくても、それぞれ
の登場人物は、ある意味で現代の若者たちが直面している問
題を象徴しているとも言えそうだ。
物語はかなり御都合主義ではあるが、それぞれの問題を際立
たせるためには、これもテクニックかとも感じた。逆に言え
ば、これくらいやらないと、最近の観客に作者の思いが届か
ないかもしれないという感じは持つ
サトウキビ刈りというと、1968年公開の『怒りのキューバ』
を思い出す。モノクロ映画で刈り取られるサトウキビの色は
分からなかったが、乾燥したキビを刈るカーンという金属の
ような音は記憶に残った。
今回は、撮影の都合で未成熟のキビだということで、結局成
熟したキビの色は分からないのだが、頭梢の部分が青々とし
たキビは暑さも象徴しているようで判りやすかった。

『コールド マウンテン』“Cold Mountain” 
『イングリッシュ・ペイシェント』でオスカー受賞のアンソ
ニー・ミンゲラ脚本、監督による南北戦争を背景にしたドラ
マ。本作で、ルネ・ゼルウィガーがオスカー助演女優賞を獲
得した。
南北戦争末期、敗色濃厚のヴァージニア州ピータースバーグ

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03月31日(水)
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