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On the Production
by 井口健二
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■大脱走、妄想代理人、かまち、パピヨンの贈りもの、ランダウン、真珠の耳飾りの少女、ケイナ、H、恋愛適齢期
らに神として君臨する樹は、住民たちに過酷な貢ぎ物を要求
し、それにより住民たちの生存が脅かされるまでになってい
た。そして住民の一人であるケイナは、そんな神の存在に疑
問を持っていた。
巨大な樹の中に住む住民という設定は、ブライアン・オルデ
ィスの『地球の長い午後』を思い出させるが、別にそれを下
敷きにしている訳ではなさそうだ。
また本作では、墜落した宇宙船の乗員の末裔や樹の精のよう
な存在が登場して、オルディスとは異なる物語が展開するの
だが、それでも『地球の長い午後』が好きだった僕にとって
は、その一端が映像化されたような気分で楽しめた。
パソコンレベルの環境でのCG作成など、制作体制はまだ充
分とは言えないようだが、歴史のあるフランスアニメの復活
が楽しみだ。
なお本作はヴォイスキャストに、キルスティン・ダンスト、
リチャード・ハリス(遺作)、アンジェリカ・ヒューストン
らが揃い、台詞はすべて英語になっている。
それで気がついた面もあるのだが、実は本編の途中でremove
と発音されている台詞が、字幕はmoveとして訳されていた。
物語の流れはそれでも理解はできるのだが、やはり意味合い
がちょっと違ってくる感じもしたので、一応指摘しておく。

『H』(韓国映画)
猟奇的な連続殺人を追う刑事を主人公にしたサイコサスペン
ス。
塵集積場で女性の遺体が発見され、続いて別の女性殺人事件
が起こる。それらは異なる事件のように見えたが、実は、そ
の手口は、数年前に6人を連続殺人し自首してきた男の1回
目と2回目の犯行と同じものだった。
捜査に当るのは、前の事件にも関った女性刑事と刑事部に配
属されたばかりの新人刑事。新人刑事は、すでに死刑が決ま
っている前の事件の犯人を尋問するが、死刑囚は謎めいた言
葉ばかりを並べて捜査は遅々として進まない。
そして一人の男が犯人として逮捕されるが、以前の犯行を模
倣した犯罪は続いて行く。
まず事件が連続殺人であることや、主人公が女性刑事であっ
たり、犯罪捜査のために死刑囚に会いに行くが謎めいた言葉
ばかり言われるなど、この作品が『羊たちの沈黙』から想を
得たことは間違いないだろう。しかしそこから、実に見事に
別の物語を紡ぎ出している。
確かこの前にも、連続殺人ものの韓国映画を紹介したが、こ
れらの作品で共通して言えるのは、物語が少なくとも映画の
中では完結していることが素晴らしい。
これが日本映画だと、得てして曖昧模糊とした結末にして、
それを想像力を逞しくするなどとしてもてはやす向きがある
ようにも感じるが、そんなのは、脚本を完璧に仕上げられな
いことへの言い訳に過ぎない。
その点これらの韓国映画の毅然とした感じは、韓国の映画文
化が大人のものであることの証拠だろう。テレビでヴァラエ
ティまがいの作品を2、3本撮っただけの奴が、見よう見真
似で映画を撮れるような国とは違うと言うことだ。  

『恋愛適齢期』“Something's Gotta Give” 
ジャック・ニコルスン、ダイアン・キートン共演のロマンテ
ィック・コメディ。
10社もの会社を経営し、世間的には成功者だが、結婚願望は
なく、付き合う女性は30歳以下限定と言い切る63歳の男と、
演出家と結婚して一人娘の儲けたが離婚、その後は男を寄せ
つけたことの無い54歳の女流劇作家。この2人が巡り合い、
互いの真の思いに気付いてしまうのだが…。
製作、脚本、監督は、メル・ギブスンがゴールデン・グロー
ブのコメディ主演賞を受賞した『ハート・オブ・ウーマン』
などのナンシー・メイヤーズ。今回は、はっきり言って初老
の2人の恋を、一杯の愛情を込めて見事に描き出している。
そしてそれを見事に演じてみせたのが主演の2人。2人はゴ
ールデングローブに揃ってノミネートされ、受賞はキートン
のみだったが、その演技の素晴らしさがこの作品の全てと言
い切れるくらいだ。
特にキートンは、メイヤーズ脚本には4度目の主演というこ
とで、正に填り役。中でも、泣きわめきながらパソコンに向

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02月14日(土)
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