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On the Production
by 井口健二
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■ヘブン・アンド・アース、恋する幼虫、悪霊喰、ブラザー・ベア、ハンター、ソニー、ギャザリング、ドッグヴィル
ドラマは普遍のものだ。物語自体が良くできていて、多分脚
本もしっかりしていたのだとは思うが、ケイジの演出は小細
工もせず、正面から物語を描き切っていて好感が持てた。 
主演は、『スパイダーマン』で主人公のライヴァルを演じた
ジェームス・フランコ、相手役には、『アメリカン・ビュー
ティ』のミーナ・スヴァーリ。ケイジも主人公が関わるヤク
中男の役で出演している。               
                           
『ギャザリング』“The Gathering”           
この作品を紹介する場合には、どうしてもネタばれが生じて
しまう。と言っても、これはこの作品の基本設定みたいなも
のだし、物語自体は別の展開なので、ご了承願いたい。  
物語は、イギリス南西部のグラストンベリーで始まる。その
町で若い男女が行方不明になり、それをきっかけに土砂に埋
められた古い教会が発見される。そしてその修復、調査に当
った学者は、そこに隠された大いなる謎を解き明かすことに
なる。                        
一方、学者の家に妻が起こした交通事故で記憶喪失になった
女性が暮らすことになる。やがて彼女は、町で老若男女を取
り混ぜた一団に遭遇し、言い知れぬ不安に駆られる。そして
彼らが、町を襲う災厄の前兆であることに気付く。    
よく似た作品では、1992年公開の『グランド・ツアー』が思
い出される。あの作品では未来人がタイムマシンで過去の災
害現場を観光旅行に来るというものだったが、本作では丁度
その逆の展開と言えそうだ。              
そして1992年の作品が、VFXを見せ場とした一種のディザ
スター映画であったのに対して、本作では見事に人間ドラマ
を展開している。また物語の展開にも破綻がなく、しかもか
なり強いメッセージ性を持っていることにも感心した。  
主演はクリスティーナ・リッチ。脚本は、作家でもあるアン
ソニー・ホロヴィッツ、監督を、1997年版『オスカー・ワイ
ルド』などのブライアン・ギルバートが手掛けている。小品
だが見逃したくない作品と言えそうだ。         
                           
『ドッグヴィル』“Dogville”             
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリア
ー監督が、ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、ロー
レン・バコール、ジェームズ・カーン、ベン・ギャザラらを
招いて作った作品。                  
物語の舞台は、1930年代のロッキーの山懐に抱かれるような
町ドッグヴィル。その町は、街道の行き止まりに位置し、そ
こから先に行く道はない。元は金鉱があったらしいが、現在
は牧師のいない教会を中心に20人足らずの住人が暮らしてい
る。警察暑もない。                  
そんな町に、一人の女が迷い込んでくる。やがて警察が来て
尋ね人の張紙をするが、彼女はギャング団に追われていると
言い、匿ってくれるように頼み込む。そして住人たちは集会
を開き、彼女を匿うことに決めるのだが…。       
この物語を、広いスタジオの中に道路や家の配置を白線で描
いただけのセット(?)のみで描くというのだから、これは
かなり挑戦的な作品だ。しかも上映時間は177分。     
正直に言って、僕は見に行く前にはかなり躊躇した。まして
や、キッドマンが計画された続編に出演しないというニュー
スもあって、失敗作ではないかという印象も持ったのだ。し
かし、今は見に行って本当に良かったと思っている。   
セットの雰囲気から、全体は舞台劇のような印象になる。し
かも演技も、パントマイム的な部分も入るなど不自然なもの
にならざるを得ない。しかし監督はそれら全てを逆手にとっ
て、その中から人間の本質に迫る物語を搾り出してくる。 
しかも、監督自身が操作するステディカムが俳優の中に入り

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12月31日(水)
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