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On the Production
by 井口健二
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■幸せになるための・、エル・アラメイン、ニューオーリンズ・トライアル、25時、みんなのうた、グッバイレーニン、ニュータウン物語
映画監督志望の友人にフェイクのテレビニュースを作らせた
り、そんな奮闘ぶりがユーモラスに描かれる。
しかしその主人公が、母親のために偽の歴史を作り続ける内
に、それが東ドイツという消滅した国家への鎮魂歌であるこ
とに気付いて行く。
主人公自身は、社会主義者ではないし、基本的には東ドイツ
の開放を喜んでいる方の人間だろう。それでも、失われた祖
国への思いはつのる。それは主義主張を超えた次元のものと
いえる。そんなしみじみした情感が素晴らしい作品だった。
『ニュータウン物語』(日本映画)
1968年生まれのドキュメンタリー作家・本田孝義監督が、自
ら4歳から18歳までを過ごしたという岡山県山陽団地を再訪
して撮った作品。
岡山駅からは13km、バスでも約30分掛かる郊外の住宅団地。
団地と言うと関東では4、5階建てのアパート群が思い浮ぶ
が、ここは一戸建ての住宅と、一部に2階建ての県営集合住
宅が並ぶ、いわゆる郊外の宅地造成地だ。
そんな住宅団地も建設から30年以上が経ち、住民は2代目3
代目となって、監督が昔遊んだ公園からは子供の姿が消え、
高齢化の過疎の町になりつつある。そんな中で、彼が住んで
いた頃からの近所の住人や、同級生たちを訪ねて作品は綴ら
れて行く。
神社のない町に共同意識を作ろうと始められた小学校と地元
合同の祭りも、今はもう行われていない。そんな団地の抱え
る問題を、監督は敢えて深入りすることなく描き出す。そし
て後半には、監督が提唱した街を使ってのアート展が紹介さ
れる。
場所と、そこに暮らす人間を描いたドキュメンタリーでは、
最近見た中では『ヴァンダの部屋』が強烈だったが。ある意
味、編集や演出で見せられる最近のドキュメンタリーに対し
て、ここでは恐らくは冗漫な部分をカットする程度で、生の
ままの提示が行われている。
それは、一面では稚拙にも見せてしまうし、実際、技術レヴ
ェルはそんなものかもしれない。しかしこの作品には、自分
自身の思い出に繋がるような懐かしさがあり、そこには魅か
れるものがあった。
なお、登場人物の中に門さんちの将平君という子供がいるの
だが、この子の名前は逆から読むと、平将門。親は気が付か
ずに付けたのかなあ。
12月16日(火)
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