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On the Production
by 井口健二
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■ラブ・アクチュア、タイムライン、デッドロック、ショコラーデ、レジェンド・オブ・メキシコ、N.Y.式ハッピー・セラピー、牙吉、コール
りたて、彼は自分でも思いもよらない怒りに見舞われて、ど
んどん深みに引き摺り込まれてしまうのだ。       
セラピストと患者のコメディでは、続編も作られたロバート
・デ=ニーロ、ビリー・クリスタル共演の『アナライズ・ミ
ー』が思い浮かぶが、本作はニコルスンがセラピストなのだ
から話はちょうど逆。それにしてこのセラピストはかなりや
ばい。                        
確かにお話にはかなりの無理もある。それをニコルスンの演
技力などで強引に見せられてしまう感じだ。しかしそれぞれ
のギャグや展開には嫌みがなく、最後は見事にカタルシスを
感じさせるなど、上手く構成されていた。        
それとキーとなる音楽に、『ウェストサイド物語』のI Feel
Prettyが使われているのも良い感じだった。そういえば、
『アナライズ・ユー』でも『ウェストサイド』の楽曲が使わ
れていたが、やはりニューヨークには一番似合う音楽のよう
だ。                         
                           
『跋扈妖怪伝・牙吉』                 
『さくや妖怪伝』の原口智生監督による劇場映画第2作。 
前作は公儀妖怪討伐の侍の娘と河童の少年を主人公に、人間
の側から妖怪との戦いを描いたが、本作では、人狼の血を引
く男を主人公に妖怪側からの人間との戦いが描かれる。  
主人公の牙吉は腕の立つ浪人。今しも襲いかかった河童の一
味を難なく打ち倒し、近江百井藩のとある宿場町にやってく
る。                         
百井藩は国境に関所を設けず、往来を自由にしていたが、そ
れは藩の家老と手を結んだ妖怪が、諸国の悪人をおびき寄せ
ては喰らうための策略だった。そして家老は、悪人討伐の手
柄で筆頭家老になったときには、妖怪たちに安住の地を与え
ると約束していた。                  
そんな宿場にやって来た牙吉は、妖怪の頭目の鬼蔵から協力
を求められる。しかし過去に人間を信じたために仲間を失っ
た牙吉には、人間との約束などは信じられなかった。そして
牙吉の危惧が現実となる日がやってくる。        
元々特撮造形の第一人者として知られる原口監督は、本作の
特撮ではCGIを排して、特にクライマックスの闘いのシー
ンでは、ワイヤーから火薬まで、ほとんどが実写指向で映像
を造り出している。                  
この特撮をどう見るかは、見る側のスタンスにも拠るが、例
えば『マトリックス』では、1が一番、3が三番の順で好き
な僕としては、やはり生身の人間が演じていることの魅力は
大きいものがある。チープといえばチープだが、それも魅力
ということだ。                    
それから、京都撮影所を使った時代劇は、周囲が背景を熟知
している魅力もある。特にファンタシー系の日本映画では、
監督の指向はあっても周囲がそれを理解していない弱さを感
じることが多いが、本作はその点が時代劇でカヴァーされ、
安心してみていられる。                
主人公の牙吉は原田龍二、相手役に清水健太郎と『さくや』
の安藤希(殺陣が見られないのは残念)。他に元モンテディ
オ山形のJ2リーガー中山夢歩が敵役を演じている。   
ハリウッド映画のおかげもあって、チャンバラが見直されて
いる時期でもあり、良い成果を期待したい。なお本作は第1
部と記されており、第2部の製作も進んでいるようだ。  
                           
『コール』“Trapped”                 
グレッグ・アイルズ原作『24時間』を原作者自身が脚色した
映画化。                       
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12月02日(火)
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