ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460415hit]

■名もなきアフリカの、さよならクロ、アンダーサスピション、ブルーエンカウンター、二重スパイ、アダプテーション、永遠のマリア・カラス
『マルコヴィッチの穴』のコンビが映画化した作品。   
蘭の花に魅せられ、フロリダに湿地帯の生物保護地域から野
性の蘭を盗伐している男ジョン・ラロシュ。その男を取材し
たニューヨーカー誌の記事を基にした映画化が、カウフマン
の脚色(アダプテーション)によって行われるはずだったの
だが…。                       
映画は巻頭、『マルコヴィッチの穴』のスタジオ風景から始
まる。マルコヴィッチ本人やジョン・キューザック本人が撮
影を続けるスタジオの片隅に、ニコラス・ケイジ扮する脚本
家チャーリー・カウフマンが登場する。これが処女作の脚本
家は、スタジオではよそ者扱いだ。           
そのチャーリーに、次の脚本の依頼が舞い込む。それはノン
フィクションの脚色だった。蘭の花に魅せられた男。その世
界を大切に描きたい脚本家。しかし物語の無い原作を、創作
無しに脚色することは困難な仕事だった。脚本家は思い悩み
続ける。                       
一方、脚本家の双子の兄弟ドナルドは、シナリオ教室に通っ
て、その講師の教えに従った脚本を書き上げる。それは余り
にステレオタイプの作品だったが、6桁の契約金で映画化権
がハリウッドに売れてしまう。             
どんどん売れっ子になって行くドナルド、その脇でチャーリ
ーの悩みはさらに深刻になって行く。そしてついにチャーリ
ーは、原作者に会って直接話を聞くことを決意し、ニューヨ
ークへと向かうのだったが。              
一体、これの何処が原作の世界を大切にした脚色なのかと言
われそうだが、実は、登場人物のラロシュを演じたクリス・
クーパーは今年のオスカーをこの演技で受賞しているし、女
性記者の役はメリル・ストリープが演じている。     
僕は物を書く立場の人間だから、どうしても脚本家の方に目
が行ってしまう訳だが、それに並行してラロシュと女性記者
の関係が描かれている。そこにも見事なフェイクが仕込まれ
ているのだが、実在の人物たちがこの創作を由としているの
だから、見事なものだ。                
人間に対する洞察力の鋭さがカウフマンの魅力だと思うが、
この目茶苦茶な展開にも本人たちが納得した所以はその辺に
あるのだろう。                    
僕は、71年にケン・ラッセルが監督した『ボーイフレンド』
以来の見事なアダプテーションだと思った。       
                           
『永遠のマリア・カラス』“Callas Forever”       
フランコ・ゼフィレリ監督が生前親交の深かったマリア・カ
ラスの最後の数ヶ月を描いた2002年の作品。       
1977年のカラスの死後、ゼフィレリにはハリウッドの2社か
らカラスの伝記映画についてオファーがあったそうだ。しか
しゼフィレリは、彼女をスキャンダルの面で描くことを拒否
し、結局その企画は実現されなかった。         
そのゼフィレリが、20数年を経て、あらためてカラスを描い
た作品ということだ。しかしそれは、カラスの本質を描きつ
つも不思議なファンタシーに満ちた作品になった。    
1974年の日本での、そして世界での最後のコンサートが開か
れてから数年後、パリのアパルトマンに老女のメイドと共に
2人で暮らすカラスは、世間から完全に姿を消していた。し
かし、以前にカラスとの親交の深かった1人のプロモーター
が、ある企画を思いついたことから物語は始まる。    
それは全盛期に吹き込まれた音源と、現在のカラスの演技を
合成して、オペラ映画を作り上げること。当初は企画に反対
のカラスだったが、自ら最悪の出来という日本公演のヴィデ
オに、全盛期の歌声を合成した映像を見せられ、徐々に乗り
気になって行く。                   
そしてついに、歌だけは吹き込んだものの、舞台では演じた

[5]続きを読む

05月16日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る