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On the Production
by 井口健二
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■第9回+ロード・オブ・ザ・リング、自殺サークル、シッピング・ニュース
イジャ・ウッドが発表されたときには、普通の若者の成長物
語になってしまうのではないかなど想像したものだったが、
それがちゃんとホビットとして描かれ、しかもほとんどのシ
ーンで普通サイズの人間やエルフたちと共演している。それ
だけでも大変な作業が必要だったはずだが、それをやり遂げ
ているところに、原作に対する思い入れが感じられた。  
この映画の素晴らしさは、何といっても総勢2400人という監
督以下のスタッフが、全員原作を理解して映画化に取り組ん
だということだろう。現場では原作の中の特殊な用語が、そ
のまま普通に使われていたと言うことだ。        
原作に対する共通の理解の元で、その細部に至るまで完璧に
再現しようとした。それが、風景から小道具までの全てに亘
って素晴らしい映像を生み出す源になっている。     
『スター・ウォーズ』の製作が、どちらかと言うとジョージ
・ルーカスの頭の中にだけあるイメージをスタッフたちが手
探りで造り出して行っているのに対して、この作品では原作
というバイブルを、全員の共同作業で造り上げていったとい
う感じがする。それが細部まで行き届いた素晴らしい映像を
生み出している。                   
描かれる風景のほとんどは、原作のファンには長年に亘って
発表されたイラストなどである程度のイメージは作られてい
たが、それらが全て目の前に動く映像で繰り広げられる。そ
れは、それだけでもある種の感動を呼ぶものだ。     
兎にも角にも百聞は一見にしかず、としか言いようのない映
画だ。                        
ただし、物語的にはかなり省略されている部分もあるので、
映画を見た後か前に原作を読むこともお勧めする。そうすれ
ば面白さが倍加すること請け合いだから。        
                           
<3月9日封切り>                  
『自殺サークル』                   
詩人で映画作家の園子温脚本・監督による作品。     
大体、詩人というのはよく判らないし、そういう人たちが作
る映画というのも独り善がりで面白くも何ともない作品が多
く、通常は敬遠してしまうのだが。この作品は偶然、試写の
間の時間が空いたので見てしまった。          
ところがこれが意外と拾い物だったのだから嬉しくなる。 
ある日、新宿駅で54人の女子高生が集団自殺するところから
物語は始まる。やがてそれは連鎖反応的に広がり、集団自殺
が相次ぐようになる。そして当初は事件性はないと思われて
いたこの出来事に、謎のウェブサイトが関係していることが
判明する。                      
物語はあまり整理されていなくて意味不明の部分があったり
もするのだが、ただ集団自殺の意味についてはその掴み所の
無さ故に、かえって現代社会が抱える病を上手く表現してい
る感じがした。また、逆にそれを解決することについては、
ある意味明確な回答というかメッセージがあり、何んとなく
救いのある結末も嬉しかった。             
石橋凌、永瀬正敏、麿赤児らの刑事たちがステレオタイプな
のは計算尽くだろうが、彼らが予告された集団自殺を阻止し
ようとする新宿駅のシーンは緊張感が上手く演出されて良い
感じだった。稚拙さはあるがエンターテインメントとしても
計算されているし。                  
また一人、気になる監督ができてしまった感じだ。    
なお、集団自殺のシーンの映像はかなり強烈なスプラッター
なので、見るときは気をつけてください。        
                           
<3月23日封切り>                  
『シッピング・ニュース』“The Shipping News”     
一昨年の『サイダーハウス・ルール』、昨年の『ショコラ』

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02月15日(金)
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