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On the Production
by 井口健二
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■潜行一千里 ILHA FORMOSA、無明の橋、少女はアンデスの星を見た、もしも脳梗塞になったなら、安楽死特区、もういちどみつめる
の考えを貫いていた。
しかしその仕事ぶりがたたって突然視野が狭窄し、記憶力が
低下するなどの症状が出始める。そして下された診断は脳梗
塞。それはATMで操作ができず現金が引き出せないなど生
活にも困難を引き起こす。
そして撮影された映画のポストプロダクションの作業にも障
害が出始めて…。
出演は2017年10月紹介『花筐/HANAGATAMI』などの窪塚俊介
と、2018年1月紹介『風の色』などの藤井武美。他に水津亜
子、久場寿幸、冨田佳輔、並樹史朗、酒井康行、嵯峨崇司、
仁科貴、安部智凛。
さらに藤田朋子、田中美里、佐野史郎らが脇を固めている。
脳梗塞になった人の体験談の映画は他にもあったが、自分も
気を付けなければとは思うもののその症状などは十人十色の
ようで、予防法などもあまりないから参考になるものではな
かった感じがする。
それに対して本作では発症後の状況に焦点が当てられ、中に
は公的な支援の受け方なども丁寧に紹介されているから、そ
の点は大いに参考になった。これは聞かないとわからないも
のだし、その点は良いと思ったものだ。
マニュアル映画という表記は『マルサの女』や『スーパーの
女』などの伊丹十三作品に対して肯定的に使われていたもの
だが、最近は恋愛マニュアルや殺人マニュアルみたいな映画
はあっても実際に役立つものは少なかった気がする。
そんな中で本作は正しく役に立つ映画で、特に脳梗塞は突然
いつ発症するかも判らないものだから、そうなったときの準
備としてこれは本当に優れた作品だ。監督の苦労も察せられ
て、本当に応援したい作品だった。
公開は12月20日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試
写を観て投稿するものです。
『安楽死特区』
2025年4月紹介『「桐島です」』や、2022年7月紹介『夜明
けまでバス停で』などの高橋伴明監督が、日本尊厳死協会元
副理事長で医師の長尾和宏による2019年刊行の原作小説を映
画化した近未来が舞台の作品。
背景は日本で「安楽死法案」が可決された時代。その法案に
基づいて東京都に国家戦略特区が設定され、そこに安楽死を
行う施設「ヒトリシズカ」が設けられている。しかしそこは
状況に鑑みて簡単に入居できる場所ではない。
そこに若年性パーキンソン病を患うラッパーの男性が入居申
請をパスする。彼は病の進行に苦しみながらも言葉を紡ぎ続
けていた。そしてその病が不治で、余命も幾ばくも無いこと
から入居が許されたものだ。
ところが彼には以前の旅先のチベットで知り合ったという女
性のパートナーがおり、彼女は安楽死に疑問を感じて施設の
実態を探るべく潜入を試みていた。そしてその思惑通りの入
居に漕ぎ着けたのだが…。
施設内では様々な思惑が進行していた。
出演は『「桐島です」』などの毎熊克哉と、『夜明けまでバ
ス停で』などの大西礼芳。他に加藤雅也、筒井真理子、板谷
由夏、下元史朗。さらに友近、シンガーソングライターgb、
田島令子、鈴木砂羽、平田満、余貴美子、奥田瑛二らが脇を
固めている。
また脚本を、1979年『処刑遊戯』などの丸山昇一が手掛けて
いる。
高橋監督と長尾医師は2021年『痛くない死に方』でも組んで
おり他にもいろいろコラボしているようだから、友人という
か思想的に共鳴はしていると思うのだが、本作は安楽死礼賛
という風には描かれていない。
その辺は脚本の丸山昇一の考え方もあるのかもしれないが、
その脚本家を選ぶ辺りが高橋監督の見識とも言えるのかな。
いずれにしても問題提起という観点でしっかりとした作品に
仕上げられていた。
僕自身は安楽死には反対だが、その目で見ていても納得でき
る作品で、いろいろ考えさせられた。但し肯定論の部分は有
り勝ちの論理かな。それも考えての作品かもしれないが。
公開は2026年1月23日より、東京地区は新宿ピカデリー他に
て全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試
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10月26日(日)
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