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On the Production
by 井口健二
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■愛はステロイド、ROPE、男神、キャンドルスティック、ディア・ストレンジャー、ラスト・ブレス、バレリーナ
る中東出身の女性や、イランの首都テヘランに暮らす凄腕の
ハッカーらが絡んで未曽有の詐欺が進められる。
共演は菜々緒、サヘル・ローズ、津田健次郎、YOUNG DAIS、
デビッド・リッジズ。そこにイランからマフティ・ホセイン
・シルディ。さらに台湾からタン・ヨンシュー、リン・ボー
ホン、アリッサ・チアらが脇を固めている。
川村徹彦の原作『損切り:FXシミュレーション・サクセス
ストーリー』から脚本はプロデューサーも務める2007年1月
紹介『蟲師』などの小倉悟。監督はモデル出身で映像クリエ
ーターに転身した米倉強太が長編デビューを飾っている。
近年はAI万能論みたいなものが蔓延していて、正直にはこ
の風潮に危惧を感じていたものだが、本作ではその危険性を
見事に描いていて、それは胸のすくような感覚だった。この
描き方には共感する。
ただ物語では菜々緒が演じる女性の共感覚などの設定が生か
し切れておらず、折角の面白さがちょっと物足りなかったか
な。上映時間が93分というのも海外ロケも敢行された作品に
しては短いもので、何となくもやもやした。
それでもそんな中に難民の子供の無国籍問題などもしっかり
と盛り込んだのは、その辺への問題意識も高い作品と感じら
れてそれは好感だった。しかもその役柄がサヘル・ローズと
いうのも良い見識と思われる。
出来たら本作に盛り込まれたいろいろな問題をもっと整理し
直して、再度挑戦して欲しいと思う作品だった。全体にもう
一歩の踏み込みが物足りなく、勿体なくも感じたものだ。
それと一点だけ、映画の後半でキャンドルスティックが描か
れるシーンに誤解があるように感じられた。為替の表現は面
倒くさいし殆んどの人は気にしないと思うが…。
公開は7月4日より、東京地区は新宿バルト9他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ティ・ジョイの招待で試写を観
て投稿するものです。
『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』
2021年『ドライブ・マイ・カー』などの西島秀俊と、2020年
3月29日付題名紹介『鵞鳥湖の夜』などのグイ・ルンメイの
共演で、2019年8月25日付題名紹介『宮本から君へ』などの
真利子哲也監督がニューヨークを舞台に描いた作品。
登場するのはニューヨークで暮らす日本人と台湾系アメリカ
人の夫婦。夫は大学で講師をしながら研究職を目指し、妻は
人形劇の公演を目指して頑張っている。そんな夫婦には幼い
一人息子がいたが…。
妻は実父が開業した雑貨店も切り盛りしており、そんな店が
強盗に襲われる。その現場には息子もいて怪我などはなかっ
たが、不穏な気持ちに襲われる。一方、夫の自動車に落書き
がされ、年式も古い車には買い替えも勧められる。
そんなニューヨークの現実が描かれる中で、夫婦の息子が誘
拐される。それは直ちに警察に届けられるが、凶悪犯罪の多
い街では警察の動きも遅い。それでも息子は発見されるが、
それは新たな犯罪に繋がっていた。
そんないろいろな事態が錯綜する中で、夫婦の関係が試され
て行く。夫は夫婦間では英語で会話し、妻の両親には片言の
中国語で話す。さらにスペイン語や手話も使われる。そして
夫が日本語で悪態をつく瞬間が訪れる。
共演者は、Fiona Fu、Christopher Mann、Everest Talde。
さらにJames Chu、Lanett Tachel、Michael Krysiewiczらが
脇を固めている。
なおポスターのデザインにも使われている劇中の人形劇は、
シカゴ出身でメリーランド大学にてジム・ヘンスンの名前を
冠したアーティスト・イン・レジデンスを務めたこともある
ブレア・トーマスが手掛けている。
異文化の坩堝のようなニューヨークで異なるルーツの夫婦が
そのアイデンティティを試される。それはある程度ストレー
トな話なのかなと思わせて、映画の後半ではとんでもない事
態に繋がって行く。
その辺の面白さが満載という感じの作品だ。ただ結末の解釈
がかなり難しくて、正直にはその解釈が纏まり切れていない
感覚だ。特には真犯人は誰なのか? 映画ではある1人に結
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06月29日(日)
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