ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459606hit]

■AALTO、燃えあがる女性記者たち、鯨のレストラン、沈黙の自叙伝
退役軍人の屋敷で、一人で「将軍」の世話をしている。
そんな主人公の父親は刑務所に収監されており、兄は国外に
出稼ぎに行っている。そして主人公にも出稼ぎの話は来てい
たが…。「将軍」が首長選挙に立候補し、選挙キャンペーン
が繰り広げられる中で、様々な不正が明らかになる。
その状況に耐えられない主人公はついにある決意をするが、
それが彼の運命を大きく変えて行く。
脚本と監督は本作が長編デビュー作のマクバル・ムバラク。
短編映画では受賞歴もあり、その中には「最優秀アクション
/スリラー/ファンタジーフィクション短編映画賞」というの
もあるようだ。また作家、映画評論家としても活動し、大学
で教鞭を執っているともある。
出演はケヴィン・アルディロアとアースウェンディ・ベニン
グ・サワラ。いずれも日本では馴染みがないが、現地では出
演歴の多い実力派俳優のようだ。
監督は1990年生まれ。監督の家族・親戚は殆んどが軍事政権
下での公務員の一族だったそうで、そんな監督自身の幼少期
の記憶が本作の背景にはあるようだ。ただし本作は監督自身
の自叙伝という訳ではなく、監督が知る一族の自叙伝、若し
くはそんな一族が存在した国家の自叙伝とも言える。
平和に過ごしてきた日本人の感覚では、空恐ろしい感じでは
あるが、軍事政権が長く続いた国家では、こんなこともあっ
たんだろうなあ、という感じの物語にもなっている。まあ他
の国の作品でもこんなのはあったかな。
それにしてもほぼ2時間の上映時間が終始緊張感に包まれた
作品であり、さらにその緊張感が終盤に向かって高まって行
く演出には舌を巻いた。増してやこれが長編デビュー作。こ
れからが楽しみな監督と言えそうだ。
公開は9月中旬より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。

07月02日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る