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On the Production
by 井口健二
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■郊外の鳥たち、アラビアンナイト 三千年の願い、屋根の上のバイオリン弾き物語、エッフェル塔〜創造者の愛〜
・F・ボイル、舞台版の作詞家のシェルドン・ハーニック。
さらにロンドンの舞台から主演に抜擢されたトポル。3人の
娘を演じたロザリンド・ハリス、ミッシェル・マーシュ、ニ
ーヴァ・スモール。また映画評論家のケネス・トゥランまで
多岐に渉るインタヴューで描き尽くしている。
因にジュイソンは、Jew-i-son という名前ではあるが両親は
カトリックなのだそうで、それでも名前の由来で幼い頃から
ユダヤ人に興味を持ち、ユダヤ人になりたいとも思っていた
とのこと。そんな想いがこの映画化に結実されたようだ。そ
んな話を掴みに本作は描かれる。
その他にも、タイトルの由来でもあるマルク・シャガールの
絵画 Green Violinistに絡めてジョン・ウィリアムスが映画
版の音楽に込めた思いなども巧みに紹介されており、どのイ
ンタヴューも映画の成立までの過程やそこに込められた想い
が如実に伝わってくるものになっている。
もちろん作中にはユダヤ人迫害の歴史も語られるが、そこも
感情的ではなく、映画製作の過程に併せて巧みに描き込まれ
ているのも上手さと言える。因にレイム監督自身はユダヤ系
だそうだ。
なお本作では、先の『ハロルドとリリアン』で語られた話は
出てこない。しかし作中に正に該当するシーンが登場するの
は、監督の前作への想いも伝わってくるところだ。そんな全
てが映画愛で綴られた作品になっている。
公開は3月31日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町&アップリンク吉祥寺にてロードショウとなる。

『エッフェル塔〜創造者の愛〜』“Eiffel”
1889年のパリ万国博覧会を記念して建造され、現代ではパリ
の象徴とも称されるエッフェル塔。その建築の秘話を2005年
7月紹介『真夜中のピアニスト』などのロマン・デュリスと
フランス生まれイギリス育ちの期待の新星エマ・マッキーの
共演で描いた歴史ロマン作品。
ニューヨーク港に建てられた自由の女神の骨組みの設計建築
などで注目された技師ギュスターヴ・エッフェルは、パリで
は持て囃される存在だったが、当初は塔の建設に乗り気では
なかった。ところが突然その建設に熱意を示しだし、最後は
資金の枯渇に私財を投入して完成させたという。
何が技師の心に火を点けたのか? それは未だに解明されて
いない謎なのだそうだ。そこに目を付けたのは小説家でエッ
セイストでもあるカトリーヌ・ボングラン。短編映画の脚本
を手掛けたこともある女流作家は、20年以上も前に本作の原
案とオリジナル脚本を執筆している。
そして本作では、2017年に企画が立ち上げられ、ボングラン
の原案を基に歴史的事実を踏まえてこれしかないと思われる
仮説を打ち立てたものだ。因に映画に描かれたボルドーでの
2人の出会いと別れの顛末は、全く史実に基づくものという
ことだ。
その一方で本作には、セーヌ河畔の軟弱な土地に高さ300mも
の塔を建てるエッフェル技師考案の建築技術なども克明に再
現されている。それはある意味、サイエンス・フィクション
とも言える作品に仕上げられていた。
脚本と監督は、短編映画の出身で2015年に監督したコメディ
映画が大ヒットしてその続編も手掛けたというマルタン・ブ
ルブロン。監督は本作の後に2023年に本国で公開予定のアレ
クサンドル・デュマ原作『三銃士』を2部作で映画化する超
大作にも大抜擢されている。
エッフェル塔の造形は日本の東京タワーと比較されることも
多いが、東京タワーの場合はその基部に建物が存在し、そこ
から延びるエレベーターを含む心柱によって全体が支えられ
ている。それに対してエッフェル塔は、基部は空間で心柱は
存在しない。
その構造の違いは建築の難易に影響し、特にエッフェル塔で
基部から第1展望台までの設計や建設の難易度は計り知れな
いものだ。しかしエッフェル技師はそれを達成した。しかも
それには深い意味が込められていた。そんなことも虚実は判
らないが、巧みに語られた作品だ。
公開は3月3日より、東京は新宿武蔵野館、シネスイッチ銀

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01月15日(日)
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