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On the Production
by 井口健二
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■BAD CITY、I AM JAM、at Baywalk、SILENT NIGHT
それは子供たちには隠されているが、敏い子らはすでにその
ことに気付いている。それでも大人たちは知らぬ風を装い、
午前0時にそれを実行に移そうとしている。しかし子供の中
にはその事実自体に疑問を持ち、その実行を阻止しようとす
る子もおり、家族の絆がそこで試されることになる。そして
午前0時が訪れる。
チラシに載っているからその状況を書いてしまうと、世界が
終末を迎えているというもの。それは生物を全て殺す毒ガス
の雲が襲い掛かり、人々はただ座してそれを待つしかない。
しかもその作用はかなり悲惨なようだ。そんな状況で政府は
全国民に即効性の自殺ピルを配布している。しかしそれは真
実なのか、子供たちの疑問は大きくなって行く。
脚本と監督は、カメラマン出身でイギリスとオランダで映画
を学び、過去に撮った複数の短編作品は各地の映画祭などに
招待されているというカミラ・グリフィン。2017年11月12日
題名紹介『スリー・ビルボード』などの撮影監督を夫に持つ
女性監督の初長編作品というものだ。製作は2010年10月紹介
『キック★アス』などのマシュー・ヴォーンが担当した。
監督の言わんとするところは非常に判り易いが、物語として
は正直に言ってかなり薄っぺらに感じる。特に展開の中では
子供の言い分が真っ当であって、それを大人たちがここまで
頑なに否定する論拠が全く明白でないのだ。それを家族の絆
で片付けられては全く迷惑としか言いようがない。
お陰で子役の存在が際立ってしまうが、それは監督の意図と
は異なるものだろう。つまり家族の絆を描くのにこの展開は
間違っていると言わざるを得ない。逆に言えばこの展開で家
族の絆を描くことはかなり難しいとも思えるものだ。SFフ
ァンとして興味は持つが納得はしがたい作品だった。
なお劇中で映画の『E.T.』を観ているシーンがあって、そ
れが何故かオリジナルヴァージョン。スピルバーグがわざわ
ざ改訂した作品の元版を出す意味も理解できなかった。
公開は11月18日より、東京はグランドシネマサンシャイン池
袋他にて全国ロードショウとなる。
10月09日(日)
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