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On the Production
by 井口健二
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■霧幻鉄道、映画 バクテン!!、1640日の家族、アンデス
いやはや壮絶な物語で、そこには目をそむけたくなるような
シーンもリアルに描かれる。これがアンデスに生きることの
現実なのかとも思わせる。兎にも角にも、荒野に生きること
の厳しさがてんこ盛りに描かれた作品だ。
因に原題の「ウイニャイパチャ」は現地の言葉で「理想郷」
の意味だそうだが…。
脚本と監督、撮影は1987年生まれのオスカル・カタコラ。大
学で演技とコミュニケーションを学び、当初は俳優を目指し
ていた若者は独学で映画制作を習得。2007年に制作した中編
映画が評価されて徐々に台頭。本作に漕ぎ着けた。
しかし2021年、長編第2作の撮影中に34歳の若さで急逝した
とのことだ。デビュー作から4年での第2作というのは、周
囲にかなりの期待があったと思われるが、その期待は叶わな
かった。そんな監督が遺した唯一の長編作品だ。
作品の中では都会に出て行った息子の存在も言及されるが、
果たして…。その存在自体を否定するような描写もあったよ
うに思える。それはある種の全体が幻想のようにも受け取れ
るが、それを上回るリアルさが映画を貫いている。
因に劇中で老夫を演じているビセンテ・カタコラは、監督の
母方の祖父だそうで、映画には監督の自叙伝の意味合いもあ
るようだ。ただしそれは作中で言及される両親を見捨てた息
子ではなく、幼い頃に祖父の許で暮らした思い出という。
しかし現実社会では映画のように両親の許を訪れない世代も
多いとのことで、そういった人々への警鐘も込められている
ようだ。いずれにしても厳しい現実が描かれた作品だ。
公開は7月30日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次
ロードショウとなる。

06月19日(日)
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