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On the Production
by 井口健二
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■歩いて見た世界、マイスモールランド、ゴースト・フリート、ツユクサ、FLEE、エリザベス
日には海岸で隕石を発見。奇跡のような出来事は幸運を齎す
と彼女にその欠片を手渡す。
その日から彼女の周囲でいろいろな事が少しずつ動き出す。
共演は、劇団大人計画の平岩紙と東京乾電池の江口のりこ。
それに子役の斎藤汰鷹。そして松重豊。他に渋川清彦、泉谷
しげる、ベンガルらが脇を固めている。
小林聡美というと2006年1月紹介『かもめ食堂』から2010年
8月紹介『マザーウォーター』などスローライフ的な感覚の
作品が印象に残るが、本作は製作体制は異なるけれどもその
系譜と言えるかな。
ただし平山監督は、小林には1982年『転校生』のイメージを
持ち続けているそうで、本作での松重とのシーンには漫画の
「チッチとサリー」のようなイメージが求められたというこ
とだ。
そして途中でもちょっと流れるけれど、エンディングテーマ
には1969年、中山千夏の「あなたの心に」が聞けて、何気な
いけど何か心を掴まれるような、そんな素敵な感覚の作品が
繰り広げられた。
公開は4月29日より、東京はシネスイッチ銀座、テアトル新
宿、シネリーブル池袋他で全国ロードショウとなる。
『FLEEフリー』“Flugt”
欧州で暮らすアフガニスタン難民の姿をアニメーションで描
き、2022年の米国アカデミー賞では国際長編映画賞、長編ア
ニメーション賞、そして長編ドキュメンタリー賞の3部門に
ノミネートされた作品。
主人公はアフガニスタンに生まれ、幼い頃から姉の衣服を好
んで着用するなどゲイの嗜好が見られる子供だった。ところ
が共産主義政権が成立し、それに対抗するムジャヒディンが
蜂起を始めた頃、パイロットだった父親が連行されたまま行
方不明となる。
この事態に危険を感じた家族は祖国からの脱出を決意。主人
公も先に北欧に脱出した母親と姉たちを追って密出国業者の
手引きに乗るが…。その旅路は希望とは異なる方向へ向かう
ものだった。そしてその後は彼の出自も性癖も絶対に口外し
てはならないことになる。
物語は全て事実に基づいているが、背景等が明白になると、
現在は研究者として成功を収めているという彼自身や家族の
存在がムジャヒディンの標的とされる恐れがあり、作品では
風貌等を隠すためにアニメーションが採用されたというもの
だ。
とは言うものの情報社会の現代では、これだけの開示があれ
ば人物の特定は容易ではないかな、そんな心配も生じてしま
う作品だった。それに先に紹介したクルド難民の状況に比べ
ると、命の危険を除けば事態は甘く見える。実際に上の作品
でも顔出しを嫌って難民本人の出演が叶わなかったそうだ。
それにしても世界の難民問題は、政治やその他の状況に翻弄
され続けている。そんなことを如実に感じさせてくれる作品
だった。
公開は6月10日より、東京は新宿バルト9、グランドシネマ
サンシャイン池袋他で全国ロードショウとなる。
『エリザベス 女王陛下の微笑』
“Elizabeth: A Portrait in Part(s)”
1952年に即位し、2022年2月6日には在位70周年を迎えた英
国女王の姿を、数多のアーカイブ及びその他の映像で綴った
ドキュメンタリー。
本作を監督したのは、1999年『ノッティングヒルの恋人』な
どのロジャー・ミッシェル。COVID-19の蔓延で外出が厳しく
なった中でアーカイブを多用したドキュメンタリーなら出来
ると考えた監督だったが、本作の完成を見た後の2021年9月
22日にCOVID-19感染症により急逝してしまった。
そんな監督の遺作である本作は、先に紹介したヘルツォーク
監督の作品以上に、被写体である女王陛下への敬愛に溢れた
作品だった。そしてその展開も先の作品と同様にテーマごと
に章立てされ、それぞれのテーマを実に判り易く説明してく
れている。
その具体的な内容に関しては、これはもう本編を観て貰わな
いと簡単には紹介し切れないが、中には『ローマの休日』や
『クレオパトラ』など王室を描いた劇映画のクリップなども
挿入され、映画ファンには特に親しみ易く観られるようにも
なっている。
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04月17日(日)
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