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On the Production
by 井口健二
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■小説の神様、ミセス・ノイズィ(トキワ荘、島にて、海辺の映画館、恋する男、ジャズ喫茶、ルース・エドガー、朝が来る、タゴールS、追龍)
光と、2019年9月1日題名紹介『爆裂魔神少女』などの佐々
木心音共演で、配給会社マーメイドフィルム代表の村田信男
による初監督作品。脚本は村田と2018年7月紹介『教誨師』
などの佐向大が共同執筆している。妻子に逃げられ、勤務先
をリストラされた男性が一念発起で会社を設立。事業は成功
するが…。男性の心は2人の女性で揺れ動き、それが失敗を
招く。共演はグラビアアイドルの出口亜梨沙。何と言うか、
男の妄想をそのまま映画にしたような作品で自分が男性とし
ては正直恥ずかしくなった。こんな妄想は男なら誰でも持つ
のだろうが、それは公にしてはいけないのではないかな。女
性の観客には馬鹿にされそうで、観ていて居た堪れなくもな
った。物語としては主人公の失敗が戒めなのだろうが。これ
を喜ぶ男もいるのだろうか? 公開は4月25日より、東京都
写真美術館ホールにて、特集上映の1本として公開。)
『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』
(昭和初期に始まり、現在でも全国に600軒は下らないとさ
れるレコード演奏を主体としたジャズ喫茶。その中でも世界
一と言われる岩手県一関市に50年続く店とそのマスターを中
心に、奥深いジャズ/オーディオの世界を写したドキュメン
タリー。マスターの名前は菅原正二。早稲田大学を卒業後に
故郷に戻って店を開いた。そこには名機とされる拘りのオー
ディオ機器が鎮座し、一緒にライヴ演奏のスペースも設けら
れる。そこで名盤が再生されると共に、世界中のアーティス
トが訪れて名演奏が披露された。それらのアーカイヴ映像や
マスターの含蓄ある解説。そして渡辺貞夫や小澤征爾、坂田
明から鈴木京香まで様々な所縁の人たちへのインタヴューが
綴られる。その内容も聞き応えがある。もちろん限られた時
間の中ではもっと聞きたいと思うものもあるが、そこが節度
という感じに見事に描かれた作品だ。公開は5月29日より、
東京はアップリンク渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『ルース・エドガー』“Luce”
(ナイジェリア出身でニューヨーク大学に学んだジュリアス
・オナー監督が、テレビ脚本家のJ.C.リーが2013年に発表
した戯曲を基に共同脚本で描いたアメリカに暮らす黒人の物
語。主人公は紛争国から養子縁組でやってきた少年。それか
ら10年が経ち、高校生の彼は文武両道で将来を嘱望されてい
る。しかし提出した課題のレポートが波紋を呼ぶ。そこには
過激な思想家の発言が活写されていたのだ。果たして彼はそ
の思想を実践するのか? それとも単に思想を準っただけな
のか? 様々な思惑が校内を、家庭を、そして社会を揺り動
かす。差別の問題は色々と考えてきたが、この作品はそんな
目にも新たな視点を与えてくれた。出演は2018年9月9日題
名紹介『IT COMES AT NIGHT』などのケルビン・ハリスンJr.
と、ナオミ・ワッツ、オクタビア・スペンサー、ティム・ロ
ス。他国に居ては判らないアメリカの現実が炙り出される。
公開は5月15日より、全国ロードショウ。)
『朝が来る』
(直木賞受賞(2012年)作家の辻村深月が2015年刊行した小説
を、2017年4月23日題名紹介『光』などの河瀬直美脚本、監
督で映画化した作品。子供に恵まれず「特別養子縁組」を選
んだ夫婦。それから数年が経って掛かってきた1本の電話。
その声の主は「自分が産みの母で、子供を還して欲しい」と
告げた。果たしてその真意は…。そして物語は声の主の数奇
な運命も描いて行く。出演は永作博美、井浦新、蒔田彩珠、
浅田美代子、佐藤令旺。他に田中偉登、中島ひろ子、平原テ
ツ、駒井蓮、山下リオ。さらに山本浩司、三浦誠己らが脇を
固めている。直上の作品も養子の話だったが、こちらは正に
日本社会を背景にした作品だ。しかも巧みな展開で最後の瞬
間に全ての駒がピタリと収まる、そんな極上のミステリーに
なっていた。カンヌの申し子ともされる河瀬監督が今回はパ
ルムドールも狙える作品と思うが、果たして…。公開は6月
5日より、全国ロードショウ。)
『タゴール・ソングス』
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03月15日(日)
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