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On the Production
by 井口健二
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■水曜日が消えた(ポルトガル、街の上で、ソニックTM、ハリエット、あなたの顔、ドヴラートフ、最高の花婿2、凱里、グランド・ジャーニー)
台北市に建てられた旧公会堂の中山堂で、撮影に集められた
男女13人の顔だけを写した作品。出演は監督の盟友とされる
リー・カンション以外は市井の12人。中にはただ黙ったまま
の人もいるが、饒舌に話したり楽器を演奏したり、さらには
居眠りをし始める人までいる。しかしその顔には長い年月を
生きてきた証が刻まれ、その言葉に苦難の道のりが想像され
る。海外ではこの構成が衝撃だったようで、確かにネットを
検索しても該当する作品は出てこない。でも僕自身は1970年
代に同様のポスターに参加した経験があり、衝撃はさほどで
はなかったかな。公開は4月から、東京は渋谷のシアター・
イメージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)
『ドヴラートフ レニングラードの作家たち』
“Довлатов”
(1941年、旧ソ連の生まれ、ジャーナリストをしながら創作
活動をするもKGBに目を付けられ、地下出版での発表が西
欧でも紹介されるようになって1978年に亡命。ニューヨーク
に居住して大手雑誌などにも作品を発表。1990年に48歳で死
去した後に本国でも出版が認められて「20世紀後半で最も愛
されたロシア人作家」と呼ばれる人物の若き日の6日間を描
いた作品。背景は1971年ということで、僕は前年に開かれた
国際SFシンポジウムでソ連の体制側作家を見ているが、当
時も陰で苦しんでいる人たちが居るのだろうとは思っていた
ものだ。そんな若き作家たちの群像劇が、綿密な時代考証で
再現された旧レニングラードの風物の中で演じられる。監督
は2015年2月紹介『神々のたそがれ』を父監督の死後に完成
させたアレクセイ・ゲルマン・ジュニア。本作ではベルリン
国際映画祭の芸術貢献賞を受賞した。公開は4月25日より、
東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『最高の花婿 アンコール』
“Qu'est-ce qu'on a encore fait au bon Dieu?”
(2015年6月14日付「フランス映画祭2015」で紹介『ヴェル
ヌイユ家の結婚狂騒曲』(日本公開題名:最高の花婿)の4年
後を描いた続編。4人の娘に4カ国から来た宗教も違う4人
の婿という究極のグローバル化を描いた前作だが、いざ暮し
が始まるとそれぞれの婿には社会との軋轢が生じていた。そ
れはちょうど現代の社会が抱える問題でもある訳だが、そん
な中でそれぞれが海外への移住を考え始める。一方、娘たち
の両親は各国の実家に招待された世界一周の旅から帰ってく
るが…。出演は両親役のクリスチャン・クラヴィエとシャン
タル・ロビー以下、一家10人のキャストが再現され、さらに
パスカル・ンゾンジらの一家も引き続き登場する。脚本と監
督も前作に続いてのフィリップ・ドゥ・ショーヴロン。前作
は宗教と人種の問題だったが、本作はさらに多様性が増した
感じだ。公開は3月27日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA
他で全国順次ロードショウ。)
『凱里ブルース』“路邊野餐”
(2019年12月8日題名紹介『ロングデイズ・ジャーニー こ
の夜の涯てへ』のビー・ガン監督による2015年に発表された
長編デビュー作。先の紹介作と同じく本作でも後半に長いワ
ンシークエンスショットが用意されている。そして物語も、
紹介作と同様にこの長回しの中で過去と現在が混在する摩訶
不思議な展開だ。とは言うものの観客としては、取り敢えず
この41分に及ぶという長回しに目を奪われてしまうのだが、
本作ではオートバイでの移動などの時間が多く、先の紹介作
ほど凝っていないのは習作というところかな。それに途中の
演技でちょっとしたミスがあって、それがなかなか修復でき
ないのはご愛嬌という感じもした。それにしても長回しでは
『1917』が話題になっているところだが、本作が嘘偽りのな
い本物のワンシークエンスショットだということは強調して
おきたい。公開は4月18日より、東京は渋谷のシアター・イ
メージフォーラムでロードショウ。)
『グランド・ジャーニー』“Donne moi des ailes”
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02月23日(日)
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