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On the Production
by 井口健二
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■スケアリー(シェイクスピアの、踊ってミタ、わたしは分断、春を告げ、21世紀の、ダンシングH、ようこそ、WAVES、霧の中の、COMPLY±ANCE)
トセラーの映像化。世界の富の大半が一握りの富裕層に集ま
っているという現実は、今後さらにその度合いが進むという
警告を、200年間に及ぶ全世界の経済活動の統計などから証
明しその解決法も示している。しかし謳われる解決法は現状
の世界情勢からは夢の理論にも見える。原著は1000ページ近
い大部のようだが、本作ではその要点を巧みに映像化してい
る。また原著では経済活動の説明にド・バルザックやジェー
ン・オースティン、ヘンリー・ジェイムズなどを引用してい
るそうだが、本作ではそれに相当する映画作品を援用して、
これも巧みに観客の興味を引き付けて行く。もちろん本作で
原著の全貌が判るものではないが、その警告に関しては理解
できる気分にはなった。注目すべき作品。公開は3月20日よ
り、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『ダンシングホームレス』
(ダンサー/振付師のアオキ裕キが、ビッグイシューの協力
で路上生活者に声を掛け、結成したダンスグループ「新人H
ソケリッサ!」の活動を追ったドキュメンタリー。「ホーム
レスは五感などの感覚が原始的な身体に近い」という理念の
許に、「人に危害を加えないこと」という縛りのみで自由な
表現によるパフォーマンスが展開される。コンテンポラリー
ダンスの範疇だと思われるが、同種のダンスでは2019年3月
紹介『ホモソーシャルダンス』が表現・内容共に素晴らしか
ったもので、比較はちょっと可哀そうかな。そうなると路上
生活者個人の問題に目が行くが、その生き方は様々とは言え
るものの、最近はテレビのヴァラエティ番組的なドキュメン
タリーでもかなり強烈な人生が紹介されるのを観ていると、
もっと掘り下げないと真実が見えてこない気がした。公開は
3月7日より、東京は渋谷のシアター・イメージフォーラム
他で全国順次ロードショウ。)

『ようこそ、革命シネマへ』“Talking About Trees”
(1956年に植民地支配を脱却したスーダン。そこから世界に
雄飛した4人の映画人。彼らは1989年に母国で集まり映画文
化を根付かせるための活動を始めるが、同年に成立した軍事
政権によって言論の自由を奪われ、映画産業も崩壊する。そ
んな彼らが20年振りに再会して母国に映画を取り戻したいと
一夜だけの映画館の復活を目指すが…。2019年ベルリン国際
映画祭パノラマ部門でドキュメンタリー賞と観客賞を受賞し
た作品だが、全体的に説明不足な感じで、特に元からあった
らしい「革命シネマ」という映画館の状況などはもう少し明
瞭に判りたかった。ましてや2019年10月13日題名紹介『ある
女優の不在』のジャファル・パナヒの行動力などを知ってい
ると、ここに登場する4人のやりたいことにも共感があまり
できなかった。もちろん不自由な中での映画人の行動は称賛
するが。公開は3月下旬より、東京渋谷ユーロスペース他で
全国順次ロードショウ。)

『WAVES/ウェイブス』“Waves”
(アメリカの中流階級の黒人兄妹を主人公に、青春の挫折や
希望を様々な音楽と共に描いた作品。映画は音楽を効果的に
使ったことで評価されているようだが、如何せん音楽に明る
くないとその辺は判らない。しかし映画では巻頭から狭い車
内で 360度旋回する映像が登場し、これには度肝を抜かれる
というか、この撮影を可能にする技術の進化に驚かされた。
その一方で画面は1.85:1のスクリーンの中に1.33:1や、
上下の切れたワイド(2.35:1)な画面なども登場し、それぞ
れが登場人物の感情なども表現するようになっている。この
手法を使った作品では2015年3月紹介『Mommy マミー』が思
い浮かぶが、その作品ほどの効果ではないものの、黒い部分
の存在が醸し出す不安感は作品に活かされていた。脚本と監
督は2018年9月9日題名紹介『IT COMES AT NIGHT』などの
トレイ・エドワード・シュルツ。製作は新興のA24。公開は
4月10日より、全国ロードショウ。)

『霧の中の少女』“La ragazza nella nebbia”
(2017年12月31日題名紹介『修道士は沈黙する』などのトニ

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01月26日(日)
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