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On the Production
by 井口健二
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■なんのちゃん(レ・ミゼ、在りし日の、ちむぐりさ、山の焚、衝動、子どもたちを、キスカム、馬三家、パラダイス・L、高津川、グリーン・L)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『なんのちゃんの第二次世界大戦』
幸運にもこの作品の初号試写を観させて貰った。初号試写と
いうのは本来は映画のスタッフ・キャスト向けに特別に行う
ものだが、今回は初対面の監督の厚意でその席に参加させて
貰った。まずは監督に感謝したい。
そんな訳で普段のマスコミ試写と異なり、資料の配布などは
なかったが、幸い本作に関してはすでにFacebookなども立ち
上げられて、そこに情報があったのでそれを参考に記事を書
かせてもらう。
物語の舞台はとある地方都市。すでに何年か前に「平和都市
宣言」は成されているらしく、そこに新たに現市長の肝いり
で「戦争記念館」の建設計画が持ち上がる。それは市長の再
選に向けたアピールでもあるようだ。
ところがその建設諮問会議の会場に、市長宛ての建設反対の
抗議文が、少女を模した石像の頭部と共に届けられる。しか
しその送り主は明らかで、直ちに市の職員の手で「建設趣意
書」と共に返送されるが…。
送り主の石材店の女主人は頑なにその受け取りを拒否し、そ
の家族もそれに同調する。それは現市長と石材店との代々に
亙る確執が原因だった。そんな状況下で市長選を背景に様々
な駆け引きが始まる。
脚本と監督は、助監督出身で今回長編初挑戦という河合健。
最近は映画学校など出身の監督が多い中で、助監督からのた
たき上げは珍しい。しかしFacebookを見るとその経歴は生き
ているようだ。
出演は2019年5月12日題名紹介『よこがお』などの吹越満、
2019年12月15日題名紹介『山中静夫氏の尊厳死』などの大方
斐紗子。さらに大杉漣の遺作になった連続ドラマ『バイプレ
イヤーズ』でジャスミン役の北香那らが脇を固めている。
この他にも舞台俳優の河合透真などプロの役者も出ているよ
うだが、出演者の多くはロケ地の兵庫県淡路島でのオーディ
ションにより選ばれた地元の人たち。東京近郊だとエキスト
ラも集めやすいが遠隔地ではこうなるものだ。
それにしても新人監督にこのハードルは高いかと思いきや、
Facebookに載っているオーディションやその後のワークショ
ップの様子などを見ると、助監督の経験がここに活かされて
いるのかと思うほどの見事なやり方だった。
物語は、第二次世界大戦に出征しなかったことで平和のシン
ボルに祭り上げられている市長の祖父と、B、C級戦犯の刑
に処せられた父を持つ石材店主との確執が係るものになって
いるが、その結末にもいろいろな思いが錯綜する。
この結末に関しては、明確でないことを批判する向きもある
かもしれないが、僕は敢えて観客に委ねたことでこの作品の
意味が生じると考える。それは前回題名紹介の作品で謳われ
た「分断」の是非がここには描かれているものだ。
テーマ的にはかなり難しい内容を、かなり巧みに描き切った
と言える作品だ。Facebookを見るとそこには監督の深い思い
もあるようだが、それをユーモアのオブラートに包んで良く
頑張って描いたと思える。
今までの日本映画が描いてこなかった新たな地平線が見えて
きた感じもした。
河合監督が個人で資金を集めて作り上げた自主映画とのこと
で、未だ公開の見込みなどは立っていないようだが、英語字
幕も制作中で、英題“Headless Girl”にて取り敢えず海外
の映画祭を目指すことにはなるようだ。
今後マスコミ試写が行われる際には連絡を貰えることにした
ので、試写が始まったら改めて紹介したい。

この週は他に
『レ・ミゼラブル』“Les misérables”

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02月02日(日)
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