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On the Production
by 井口健二
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■超・少年探偵団NEO、キューブリック、かぞくあわせ、夏少女(風水師、エンテベ、アダムズ、ブラインド、向こうの家、駅までの道、レディM)
はちょっと感覚的にずれてしまった。
お話だけなら第3話も良いのだが、SF的な感覚が切れてし
まったのは残念に感じられた。もっとも監督たちには最初か
らそんな意図はなかったのかもしれないが…。これも以前に
言われたSFの拡散と浸透の結果なのだろうか?
公開は9月7日より、東京は池袋シネマ・ロサにて2週間限
定のレイトショウとなる。
『夏少女』
テレビで多数の名作を生み出した脚本家早坂暁が自身の体験
を基に執筆した脚本を、1960年代の名作ドラマ『若者たち』
を手掛けた森川時久監督で描いた作品。1996年に完成された
ものの当時は諸般の事情で公開されなかった作品が、23年を
経て劇場初公開される。
舞台は瀬戸内海に浮かぶ人口3000人の小さな島。その島で雑
貨店を営む主人公の家では、母親が郵便船の船長で毎日本土
からの郵便物やその他のものを運んでいた。そして病弱とい
う父親はいつも酒を飲んではぐうたらしていたが…。
主人公が12歳を迎えた8月6日。一家は広島に出向き、鎮魂
の灯篭流しの行われている岸辺で、主人公はある重大なこと
を告げられる。そして川岸で原爆瓦を入手した主人公には、
赤い服の少女が見えるようになる。
その少女は主人公の家にもついて来るが他の人の目には見え
ないようだ。そして少女は主人公の家で一緒に暮らしだす。
出演は、桃井かおり、間寛平。他に朱門みず穂、高原駿雄、
川上夏代、ジャズ演奏家の坂田明。また子役には地元の子供
たちが出演しているようだ。
ジャンル的にはファンタシーと言えるものだが、それが特に
ファンタスティックな現象を描くためではなく、それは広島
の原爆を描くための手段として使われているものだ。そして
それが広島の悲劇を明確に描き上げる。
その悲劇自体は映画の中では絵画や台詞などによって間接的
に表現されるものだが、少女の存在がそれを際立たせる。ま
た間寛平によるコメディの要素などが巧みに織り込まれて、
作者の思いが伝えられる。
それは当然反戦であり、反原爆を訴えるものだ。しかしそれ
を声高に訴えるのではなく、赤い服の少女の姿に広島で亡く
なった少女の果たせなかった未來を描くことで、その悲劇の
深さを描いている。
そしてそこに流れる鎮魂のサキソフォンの音色。実は演奏家
の出演を知らずに見ていて、登場の瞬間に容姿が似ているな
と思い、さらにその演奏の1音目から坂田ワールドに引き込
まれてしまった。
そんな演奏が2度に亙って聴けるのも素晴らしい作品だ。
僕自身は常々反戦の立場を執るが、反戦と謳いながら戦闘の
場面を嬉しそうに描く馬鹿げた作品が多い中で、本作は正に
心底からの反戦を描いた作品と言えるものだ。
公開は8月3日より、東京はポレポレ東中野にて2週間限定
のモーニングショウとなる。
なお期間中にはゲストによるトークショウの予定もあり、出
来れば全国での上映も期待したいものだ。
この週は他に
『風水師 王の運命を決めた男』“명당/明堂”
(王の助言者として風水師が重用されていた朝鮮王朝時代。
最強の運気をもたらす地相「明堂」を巡って、王家を裏で操
る老風水師一族の陰謀に若き天才風水師が挑む。主人公は老
師の言葉に異を唱えて不興を買い、妻子まで奪われる。この
ため雌伏した主人公は民衆の中で次々実績を上げるが…。王
宮で権勢を揮う老師一族に冷遇される王族の1人が主人公の
許を訪れ、共に老師を敵とする共闘を目論む。出演は2005年
4月紹介『マラソン』などのチョ・スンウと、2015年『コン
フェッション 友の告白』などのチソン。因にチソンが演じ
る興宣君は実在の人物で、その逸話に基づく物語だそうだ。
他に、2013年『観相師』などのペク・ユンシク、2018年12月
2日題名紹介『ゴールデンスランバー』などのキム・ソンギ
ュらが脇を固めている。監督は2010年5月紹介『仁寺洞スキ
ャンダル』などのパク・ヒゴン。公開は10月25日より、東京
はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『エンテベ空港の7日間』“7 Days in Entebbe”
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07月28日(日)
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