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On the Production
by 井口健二
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■いなくなれ・群青、ホームステイ、SF核戦争後の未来(みとりし、惡の華、ブロードウェイ版ロミオとジュリエット、お百姓さんに、任侠学園)
因の今回の邦題は、当時のテレビ東京での番組名だそうで、
SFとあるのは当時のブームもあるが、内容のあまりのリア
ルさに、視聴者に与える衝撃を少しでも和らげようという意
図もあったのではないかとも言われている。
製作と監督は、後に1992年『ボディガード』や1997年『ボル
ケーノ』を手掛けるBBC出身のミック・ジャクスン。脚本
はケン・ローチ監督の1996年『ケス』の原作・共同脚本を手
掛けるバリー・ハインズが担当している。
出演は、カレン・ミーガー、リース・ディンズデール、デヴ
ィッド・ブリアリー、リタ・メイ。当時から今も主にテレビ
で活躍する俳優たちが演じている。
BBCでは1965年にピーター・ワトキンス監督の“The War
Game”で核戦争の恐怖を描いたが、そのあまりに強烈な内容
に放送を自粛。ところが数館の劇場で自主上映され、それが
フェイクであるにも拘らずアメリカアカデミー賞で最優秀長
編ドキュメンタリー賞に輝くという苦い経験があり、本作に
はその熱も込められたようだ。
また試写会で配られたプレス資料には、先駆的な作品として
1961年の東宝=円谷特撮映画『世界大戦争』が紹介されてい
るが、その作品でも主人公はプレス・クラブの運転手という
市井の人物になっている。
その点は本作でも踏襲されているが、さらに東宝映画には別
ヴァージョンの脚本があって、橋本忍が書いたとされるその
脚本では、一度は逃れた運転手が核戦争後の廃墟東京を、這
いずるように戻って行くという展開で、「核の冬」などの描
写はないものの広島長崎を踏まえた作品だったものだ。
最近の架空戦記映画では、やたらと核ミサイルをぶっ放すシ
ーンがあって、被爆国日本の国民としてはどうなの? と思
うことも多いが、少なくとも1980年代までは、もっと真剣に
核の恐怖が描かれていたということだ。
国内初のディスク化となるブルーレイ&DVDは、7月17日
からキングレコードより発売・販売される。

この週は他に
『みとりし』
(一般社団法人「日本看取り士会」という団体もある余命い
くばくの人の最期を看取る人たちの活動を描いた作品。団体
の代表を務める柴田久美子さんの経験を原案に、主演も務め
る榎木孝明が企画から携わり映画化。過疎の村を舞台に娘を
交通事故で亡くした男性と、新人看取り士が仕事の中で出会
う様々なエピソードが描かれる。2008年6月紹介『おくりび
と』や、2018年1月28日題名紹介『おみおくり』は人が亡く
なった後の話だったが、本作が描くのは生前の最後の時。そ
れは予想以上にシビアなエピソードが描かれていた。共演は
1200人のオーディションから選ばれた2105年『リアル鬼ごっ
こ』などの村上穂乃佳。他に片桐夕子、石濱朗、仁科貴、河
合美智子、つみきみほ、金山一彦、宇梶剛士、櫻井淳子らが
脇を固めている。脚本と監督は2016年11月13日題名紹介『マ
マ、ごはんまだ?』などの白羽弥仁。公開は9月13日より、
東京は有楽町スバル座他で全国順次ロードショー。)

『惡の華』
(ボードレールの同名詩集をモティーフにした押見修造原作
コミックスを、2018年2月紹介『ゴーストスクワッド』など
の井口昇監督で映画化した作品。なお押見は『ゴースト…』
のポスターイラストを手掛けている。主人公は山間の閉塞感
一杯の町に暮らす読書好きの中学生。ある日、ちょっとした
出来心で人気女子の体操着を盗んでしまい、しかもそれを根
暗な女子に知られてしまう。そのため弱みを握られた主人公
は彼女に言うままに行動することになるが…。彼女の要求が
エスカレートする。変態映画を得意の監督が力量を発揮した
PG12指定の作品だ。出演は、2018年8月26日題名紹介『うい
らぶ。』などの玉城ティナと伊藤健太郎(旧名健太郎)。他に
飯豊まりえ、2019年2月24日題名紹介『賭ケグルイ』などの
秋田汐梨。なお秋田はオーディションで満場一致で選ばれた
そうだ。公開は9月27日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他
で全国ロードショウ。)

『ブロードウェイ版ロミオとジュリエット』

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07月07日(日)
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