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On the Production
by 井口健二
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■ラ・ヨローナ、神と共に、オーファンズ・B(二宮金、鉄道運転士、凪待ち、ゴールデンR、北の果ての、ある町の高い、カニバ、ピアッシング)
消息を訪ねて行く。そこに別の幼馴染の男性とその恋人や、
探している男性の配偶者なども絡んでくる。
そんな物語がロードムーヴィ風な感触で、台詞の言語は日本
語で撮影も日本国内で行われているのに、どこか無国籍な感
覚で展開されて行く。そして主人公を巡る様々な謎が物語の
各所に散りばめられている。
主演は、京都造形芸術大学在学中の2015年に高橋伴明監督の
『赤い玉、』のヒロインに抜擢された2018年12月紹介『クマ
・エロヒーム』などの村上由規乃。相手役は大分県の出身で
九州を中心に活動している俳優の上川拓郎。
他に、監督の同級生で在学中にNHK連続テレビ小説『わろ
てんか』にも出演した辻凪子。同じく同級生の佐々木詩音、
窪瀬環、吉井優らが脇を固めている。
上映時間が89分の作品では、物語にはかなり簡略化されてい
るところもあり、脈絡が掴み難いものだが。そこには監督の
確信犯的な感じもあって、観客にはそれに付き合う覚悟も試
される作品だ。
特に結末に関しては様々な解釈が成り立つものだし、ミステ
リー的な要素も含めていろいろな思いが交錯してしまう。そ
れを超越して監督の感性だけを楽しんでも良いが、それ以外
の部分を考えるのは下衆なのかな。
とは言え監督の感性の瑞々しさは存分に感じられるし、それ
は心地の良いものでもある。それ故の「PFFアワード2018」
グランプリも充分に理解できる結果だ。こんな感覚に浸れた
のも久しぶりな感じがした。
因に試写会は監督と出演者の挨拶付きだったが、その際の監
督の発言によると、無国籍風の撮影は関西・四国の7府県の
ロケーションで行われたとのこと。そのロケハンはインター
ネットで行ったそうで、時代を感じてしまった。
また監督は「遺作」発言も繰り返していたが。これには卒業
してしまうと、自主映画の制作も難しくなるという意味も込
められていたようで…。文化庁には既成の監督だけでなく、
新たな才能への支援の施策も欲しいと思ったところだ。
正直、次回作の期待したい監督でもある。
公開は5月31日より、東京はテアトル新宿にて1週間の限定
ロードショウとなる。

この週は他に
『二宮金次郎』
(以前は小学校の校庭などによく立っていた像の主を描いた
作品。二宮は江戸時代後期に現在の神奈川県小田原市で生ま
れた経世家と呼ばれる人物だが、薪を背負って歩きながら本
を読む姿は有名なものの、彼自身の業績はあまり知られてい
ないようだ。実際に彼を描いた伝記映画は過去に2本ほどあ
るが、いずれも若き日を描いたもの。しかし後半生では旧態
依然の藩政や住民の反対などと戦う姿が描かれる。主演は神
奈川県秦野市出身で、『超力戦隊オーレンジャー』や『水戸
黄門』格さん役の合田雅吏。他に田中美里、綿引勝彦、渡辺
いっけい、石丸謙二郎、榎木孝明、田中泯、柳沢慎吾らが脇
を固めている。中でも小田原市出身柳沢の真剣さは微笑まし
かった。脚本は2010年8月紹介『武士の家計簿』などの柏田
道夫、監督は2006年12月紹介『長州ファイブ』などの五十嵐
匠。公開は、6月1日〜28日の東京都写真美術館ホール他、
全国各地の公民館等で上映される。)

『鉄道運転士の花束』“Dnevnik masinovodje”
(ブリュッセル国際映画祭でグランプリの他、モスクワ国際
映画祭の観客賞など多数の受賞に輝くセルビア・クロアチア
の作品。主人公は定年間近の鉄道運転士。彼は長い在職中に
28人を撥ね殺した記録を持つ。しかしそれは業務上で仕方の
ないことと割り切っていた。ところが彼の義理の息子が仕事
を継ぐと言い出し、優秀な成績で資格を得る。そして勤務が
始まるが…。主人公の最大の気掛りは息子が遭遇する最初の
死亡事故だった。出演は1995年『アンダーグラウンド』など
のラザル・リトフスキーと、同作でも共演のミリャナ・カラ
ノヴィッチ。監督は主にテレビで活動のミロシュ・ラドヴィ
ッチが手掛けている。鉄道運転士の映画では2018年11月3日
「東京国際映画祭」で紹介『ブラ物語』もあったが、この役

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04月21日(日)
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