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On the Production
by 井口健二
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■第31回東京国際映画祭<コンペティション部門>
しかし凶作などで極貧の生活になっている。そこにスウェー
デン人の豪農が現れ、新たな作物のために土地の買収を申し
出る。これに対して父親は、寡男の豪農に娘を嫁がせ、一つ
の家族にして安泰を考えるが…。その祝いの宴の最中に事件
が起きる。物語を書くとかなりとんでもない話のようにも見
えるが、映画自体はオーソドックスで破綻もない。寧ろ上手
く行き過ぎるという感じもしてしまうものだ。でも描かれる
物語は厳しい。雰囲気には、時代背景は異なるが2002年2月
紹介『シッピング・ニュース』を思い出すかな。これが北欧
の感じなのだろう。
『ヒストリー・レッスン』“Clases de Historia”
世代の異なる女性2人の交流を描いたメキシコ映画。主人公
はベテラン教師。その教室に反攻的な転校生が入ってくる。
そして生じたトラブルから2人は共に学校へ行くことができ
なくなる。ところが生徒が教師の自宅を訪ねて来て、徐々に
交流が深まって行く。そして2人は、生徒が子供の頃に父親
に連れて行かれたという伝説の山の洞窟を目指すことになる
が…。映画祭のジャンル分けではただのドラマになっている
が、物語には多少ファンタスティックなところもあり、特に
結末のシーンには不思議な雰囲気も漂っていた。これを無理
にファンタシーと呼ぶ気はないが、魔女伝説への言及など、
僕の心には何かが響く感じもした。もしかすると2人のどち
らかが? そんなことも考えてしまった。
『大いなる闇の日々』“La Grande Noirceur”
第2次世界大戦下のアメリカで、チャップリンの物真似をす
る芸人が辿る数奇な運命を描いたカナダ作品。主人公は道端
で親切そうな男に声を掛けられ、男に言われたままにとある
町に辿り着くが、そこではとんでもない事態が待ち受けてい
た。大戦下ということのいろいろな事象は提示されるが、物
語自体は時代背景を超えた不条理劇のような感じで、何とも
摩訶不思議な展開になる。これが何を意味しているのかは理
解し辛いが、中で流されるアーカイヴの音声には現代に対す
る批判のような感じもして、それが制作者の意図なのかとも
思わされた。不条理劇ということではファンタシーの範疇に
なるかとも思わせるが、そこまでの意図はないと考える。で
も不思議な感覚の作品だった。
『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』“Az Úr hangja”
スタニスワフ・レムが1968年に発表した長編小説の映画化。
ハンガリー人の若者が幼い頃に姿を消した科学者の父を探し
てアメリカにやって来る。実は過去に起きた未解決事件を探
るテレビ番組に父親の足跡を見出し、その真相を探ろうとし
ていたのだ。ところがその事件には米国防省が関っているよ
うで、中々真相には辿り着けないが…。レムの原作は邦訳が
見つからなかったが、ウィキペディアの記事によると科学者
の父親側の話だけのようで、息子の話は映画化の創作のよう
だ。それでその部分がSFかどうかが問題になるが、多少微
妙かな。それより原作のSFの部分がかなり削られているよ
うで、それも問題だろう。ただしプロローグと間奏の部分が
原作にあるかどうか判らないが、これがかなり気になった。
『愛がなんだ』
2017年1月29日題名紹介『退屈な日々にさよならを』などの
今泉力哉監督が、直木賞作家・角田光代の同名恋愛小説を映
画化。1人の男性に想いを寄せるも、その想いに応えて貰え
ない女性を描く。主人公は勤務中も彼氏からのメールを待ち
続け、呼び出しがあれば夜中でも彼氏の許に駆けつける。そ
んな献身的な女性だが、彼氏の方は用事が済めば適当に追い
返したり、遂には別に彼女ができたと言ってその場に主人公
を呼び出したりもする。以前にも書いたように、この監督の
作風は性に合わないが、本作でもその点は同じ。ただし本作
は原作物ということで違いが出るかと思ったが、作品は原作
の台詞をそのまま朗読劇のように描いている感じで、違いは
出たものの好ましくはなかった。
『ブラ物語』“The Bra”
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11月03日(土)
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