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On the Production
by 井口健二
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■ジョニー・E、ヘレディタリー(バグダッド、おとなの、家族のはなし、山中傳奇、快楽の、世界で一、ハード・C、走れ!T、不滅の、夜明け)
『家族のはなし』
(2015年2月紹介『振り子』に続く、鉄拳原作パラパラ漫画
の実写映画化。前作の夫婦の機微から本作では親子関係が描
かれる。主人公は大学を中退してバンド活動中。すでにプロ
としての足掛かりも掴んでいる。そこに父入院の報が届き、
急いで長野県の生家に帰ってくるが…。父親は検査入院で無
事。しかし生業のリンゴ農園に後継者はいない。しかも主人
公はレコード会社から契約解除を通告されてしまう。出演は
岡田将生、成海璃子、財前直見、時任三郎。他に金子大地、
佐藤寛太らが脇を固めている。鉄拳がアートディレクターも
務め、監督はBS-TBS「ケータイ刑事」など山本剛義の映画デ
ビュー作。2006年12月紹介『神童』で注目された成海の「バ
イエル2冊」発言には笑ったが、最後の父親の行動は、何か
あると思っていても胸を突かれた。場面転換にパラパラ漫画
が使われるなど仕掛けも面白い。公開は11月23日より、全国
のイオンシネマにて上映。)
『山中傳奇』“山中傅奇”
(1975年カンヌ国際映画祭に出品『侠女』で中華圏初の受賞
を果たすなど、武侠映画の牽引者だったキン・フー監督によ
る本国公開1979年の作品。日本では今まで映画祭での短縮版
上映のみだった作品が、4Kリマスター、192分の全長版で
劇場初公開される。時は11世紀、宗の時代。貴重な経文の写
経のため静かな環境を探していた主人公は、男に案内されて
山奥の城跡を訪れる。そして写経を始めた主人公だったが、
世話役の女性から娘を紹介され、結婚に至る。しかしその娘
には写経に関る大きな秘密があった。出演は後に『さらば、
わが愛 覇王別姫』などの製作総指揮を務めるシュー・フォ
ンと、2018年6月3日題名紹介『妻の愛、娘の時』などのシ
ルヴィア・チャン。さらに『侠女』でもフォンと共演のシー
・チュン。逆回し中心の視覚効果は流石に古色だが、長尺の
物語はしっかりと楽しませてくれる。公開は11月24日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『快楽の漸進的横滑り』
“Glissements progressifs du plaisir”
(前回題名紹介『ヨーロッパ横断特急』と共に回顧上映され
るアラン・ロブ=グリエ監督の1974年作品。娼婦が殺され、
同じ家にいた女性に嫌疑が掛かる。このため女性は修道院の
ような場所に勾留されるが、そこに殺された娼婦にそっくり
な女弁護士が現れたり、女体を筆にして描かれる絵画など、
一筋縄では行かないストーリーが展開される。それを監督は
「革命への希望の体現」と称するが、先進的表現は各国で上
映禁止などの憂き目にも遭った作品だ。出演は1971年『フレ
ンズ』で主人公のミシェルを演じたアニセー・アルビナ。他
にジャン=ルイ・トランティニャン、イザベル・ユペール、
2011年1月紹介『神々と男たち』などのマイクル・ロンズデ
ールらが脇を固めている。ロブ=グリエ本人による原作も翻
訳されているものだが、その原作も物語性を拒否した難解な
作品のようだ。公開は11月下旬より、東京は渋谷シアター・
イメージフォーラム他にて全国順次上映。)
『世界で一番ゴッホを描いた男』“中國梵高”
(中国広東省深圳市大芬。そこは世界市場に流れる複製画の
6割が制作されているという絵師の町だ。その町で20年間、
ゴッホの絵だけを作り続けてきた趙小勇。彼は油絵を学んだ
こともなく、独学で多い時には月600〜700枚、10万点以上の
ゴッホの複製画を描いてきた。そんな彼が本物のゴッホの絵
を見にオランダに行こうと思い立つ。それはゴッホの生き様
にも心酔する彼が、本物を見れば何かが変わると思ったから
だ。そしてついにその夢が実現するが…。正直に言って高々
この程度の話で、自分がこんなに感動すると思わなかった。
それはオランダ訪問の後でパリに立ち寄り、そこでゴッホが
描いた「夜のカフェテラス」の現地を訪れた感激などが見事
に伝わってきたもので、自分もその想いを共有することがで
きた。監督は著名な写真家でもある余海波と娘の余天K。こ
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10月07日(日)
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