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On the Production
by 井口健二
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■ワンダーランド北朝鮮、私の人生なのに(7号室、悲しみに、ポップ・アイ、ラ・チャナ、バッド・G、オーケストラ・C、スターリンの葬送)
が、僕は見逃していた作品。タイが舞台の中年男性と象によ
るロードムーヴィ。建築家の主人公は業績もあるが、後進の
ため席を譲らざるを得ない。そんな時、バンコクの町角で見
付けたのは、彼が幼い頃に一緒に育った象だった。そして思
わずその象を買ってしまうが、妻には理解されず、止む無く
彼は象と共に故郷を目指すことになる。ところがヒッチハイ
クしたトラックは見知らぬ場所で彼らを置き去りにし、さら
に象の勝手な移動を禁止する法律によって警察も動き出す。
それでも何とか故郷に向って進んで行くが…。脚本と監督は
本作が長編デビューのカーステン・タン。出演は、タイでは
音楽家として著名なタネート・ワラークンヌクロ。時間軸の
前後が多少判り難いが、本作は2017年のサンダンス映画祭で
脚本賞受賞など、喝采されたそうだ。公開は8月より、東京
は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)

『ラ・チャナ』“La Chana”
(本名アントニア・サンティアゴ・アマドール。1946年生ま
れ。バルセロナの貧困層出身で14歳から踊り始め、若くして
才能を開花。1960年代には世界ツアーなども行い、欧州映画
に出演してハリウッドにも招かれたが、そのキャリアの絶頂
期に表舞台から姿を消す。そんな伝説的フラメンコ・ダンサ
ーの姿を追ったドキュメンタリー。彼女の行動の裏には封建
的なヒターノ(男性)社会の影があるようだが、本作ではそ
の辺を深くは追及しない。それよりも現在の屈託なく踊る彼
女の姿が中心に描かれている。それは若い頃に編み出した激
しく足を踏み鳴らすもので、現在は膝を悪くして椅子に座っ
たままでのパフォーマンスだが、その迫力には正しく圧倒さ
れた。試写会場では、上映中に届いたという本人からのメッ
セージも披露され、日本公演も行ったことのあるダンサーの
思いが伝わってきた。公開は7月21日より、東京はヒューマン
トラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』“ฉลาดเกมส์โกง”
(アメリカ留学を目指してアジア全域で行われる学力試験、
その合格を目論む大カンニング作戦を描いた、中国での実話
に基づくとされるタイ映画。主人公は学力優秀な女子高生。
しかし貧困層の彼女は金持ちの同級生にカンニングを許した
ことから、同級生の友人も含めたカンニングビジネスに巻き
込まれる。一方、彼女はやはり貧困層の男子と学内のトップ
争いを続け、アメリカ留学に近づくが、学内から選ばれるの
は1人だけだった。そんな中で金持ちの子女たちに留学の道
を開く作戦が始まり、それは予想外に大規模になって行く。
どこまでが実話か知らないが、かなり奇想天外な作戦の実行
がスリルとサスペンスで描かれる。脚本と監督は主に短編を
手掛けてきたナタウット・プーンピリヤ。主演のモデル出身
チュティモン・ジョンジャルーンスックジンのクールビュー
ティ振りも注目の作品だ。公開は9月22日より、東京は新宿
武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『オーケストラ・クラス』“La mélodie”
(プロの演奏家が、それまで音楽に触れる機会のなかった子
供たちに演奏を教えるというフランスに実在する教育プログ
ラムからヒントを得たとされる作品。主人公は演奏活動に行
き詰まっているヴァイオリニスト。彼はアルジェリアからの
移住者の子供が多く通う小学校に赴任し、連合音楽会に出演
できるレヴェルまで彼らを指導することを求められるが…。
才能を見せる生徒や落ち着きのない生徒など、様々な子供た
ちが事件を引き起こす。物語は俳優でもあるギィ・ローラン
のアイデアに基づくとされるが、僕は観始めてすぐに2016年
6月26日題名紹介『ストリート・オーケストラ』を思い出し
た。それも実話に基づく作品だったが、ファヴェーラが舞台
の過激なブラジル作品に比べると、本作の方が多少身近に感
じるかな。この程度なら日本でも共感を呼べそうだ。脚本と

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06月17日(日)
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