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On the Production
by 井口健二
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■X−ミッション、ジョーのあした、Mr.ホームズ、ジプシーのとき、バナナの逆襲、いいにおいのする映画
2005年4月紹介『ライフ・イズ・ミラクル』などの旧ユーゴ
(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)サラエボ出身エミール・ク
ストリッツァ監督が1989年に発表した作品。
舞台は、ジプシーたちが居住するユーゴのとある村。主人公
は、祖母からちょっとした魔法の力を授けられた青年。彼に
は相思相愛の彼女がいるが、財力のない青年は彼女の母親に
認めてもらえない。
そんな青年は、村にやってきた金持ちらしい男の口尾車に乗
り、脚の不自由な妹を病院に入れてくれる約束で妹と共に男
の車に乗り込むが…。男のあくどい手口に翻弄されて、見知
らぬ土地を放浪する羽目に陥ってしまう。
映画はロマ語の台詞で描かれているそうで、主人公らが異国
に出てそれぞれに国の言葉になるシーンでは字幕に<>が付
いていた。といっても僕にはロマ語自体も判らないのだが、
何となく納得できる作品だった。
ただまあ、僕自身が新婚旅行でパリに行った際に、多分ジプ
シーと思われる子供たちの集団に財布をすられそうになった
経験があると、この作品に登場するジプシーたちの生態は、
納得できるというか何とも複雑な気分にさせられる。
恐らくそれがジプシーの現実なのだろうし、それを真剣に描
きたかったのが、監督の気持ちなのだろう。
因に僕がパリに行ったのはこの映画が発表されるよりさらに
10年ほど前のことだが。最近でも同じような被害にあった人
の話も聞いたりすると、その現実は今もあまり変わってはい
ないということのかな。
公開は1月23日〜2月12日の3週間限定で、YEBISU GARDEN
CINEMAにて「ウンザ!ウンザ!ロードショウ!」として紹介
されるクストリッツァ監督の特集上映の中で行われる。
なお同特集では、
『アリゾナ・ドリーム』(1992年、ジョニー・デップ主演)
『アンダーグラウンド』(1995年)
『黒猫・白猫』(1998年)
『SUPER8』(2001年)
『ライフ・イズ・ミラクル』(2004年)
の上映も行われる。

『バナナの逆襲第1話ゲルテン監督、訴えられる』
              “Big Boys Gone Bananas!*”
『バナナの逆襲第2話敏腕?弁護士ドミンゲス、現る』
                     “Bananas!*”
果実では世界有数の企業であるドール社が、中米ニカラグア
のバナナ農園労働者に対して行った行為を巡る2つの裁判を
取材したドキュメンタリー。
実は第1話は2011年の作品、第2話は2009年の作品で、順番
は逆になるものだが、制作者の主張をより強力に訴えるには
この順番に観せるのが最適と言えそうだ。
その第1話で描かれるのは、第2話となる作品の上映を巡る
もの。アメリカの映画祭での上映に際してドール社が妨害工
作を実施し、それが裁判に至るものだ。従ってこの第1話の
中には第2話の一部がインサートされるが、それはあまり気
にならなかった。
そして第2話は、そこまでしてドール社が上映を阻止しよう
とした作品の本編となるものだが。それはドール社がニカラ
グアで行った不正行為を告発するものであり、その危険な行
為と、さらにそれを隠ぺいしようとするあくどさが克明に描
かれるものになっていた。
ここで第2話に関しては、ドール社は被告人だから裁判を受
けて立つのは仕方ないことなのだが、第1話の妨害工作は、
明らかに言論の自由に対する侵害行為でなぜこのような行動
に出たのかは理解に窮するものだった。とは言え第2話が描
く利益至上主義も疑問ではあるが。
それにしてもこのドール社の行為は、まずは資金力に物を言
わせての弾圧であり、さらには「他国がどうなろうと自国さ
え良ければよい」という、アメリカ政府の遣り口をそのまま
踏襲した感じのもの。そのやり方が通用しなくなっての焦り
は、現政府を観ている感じもした。
つまりこの作品は、制作者が意図した以上に今の世界情勢を
反映しているものとも言え、これを観て日本とアメリカの関
係を考え直すことも重要な作品に思えてきた。特にアメリカ
企業の思惑優先で進むTPPの目的がどこにあるかも、この

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01月10日(日)
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