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On the Production
by 井口健二
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■TATSUMI、うまれる2、ブラック・ハッカー、マエストロ!
ように描かないと無意味なもの。本作にはそんな独りよがり
な部分が感じられた。
特に事件の主謀者が誰で、その意図や目的が何だったのか、
その辺ぐらいはもっと明確にして欲しかったところだ。でも
次の作品には期待したくなる監督ではあった。
公開は11月22日から、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
の他、ユナイテッド・シネマ豊洲など全国のユナイテッド・
シネマを中心にロードショウされるようだ。
『マエストロ!』
2006年12月紹介『神童』などのさそうあきら原作コミックス
の映画化でクラシック音楽の演奏をテーマにした作品。
物語の背景は経営が破綻して解散に追い込まれた交響楽団。
団員の中で優秀な者は他の楽団に移籍したが、希望の叶わな
かった「負け組」も数多く残されている。そして主人公は、
楽団史上最年少でコンサートマスターの重責を担った逸材だ
が、希望した海外の楽団からは不採用の返事が届く。
そんな主人公の許に、突然楽団の再結成とコンサート実施の
案内が届く。ところが指定された練習場に行ってみると、そ
こは廃業した町工場の跡で、しかも半信半疑の楽団員の前に
現れたのは名も知らず風体もおかしな謎の指揮者。その上そ
の指揮者は奇矯な演奏指導を開始する。
この指導には多くの楽団員が反発するが…。さらには指揮者
が連れてきたプロ経験のないフルーティストの少女もいて、
練習場は喧噪の渦と化す。しかし謎の指揮者は「ここは闘い
の場」と宣言し、その熱血の指導は徐々に楽団員の闘争心に
火を着ける。
出演は松坂桃李、西田敏行、それにシンガーソングライター
で映画初出演にしてヒロインを務めたmiwa。ヒロイン役の演
技は途中少し覚束ない部分もあったが、全体的には合格点だ
ろう。
他に古館寛治、大石吾郎、濱田マリ、河井青葉、池田鉄洋、
モロ師岡、島田久作、松重豊。さらに宮下順子、中村ゆり、
石井正則、でんでんらが脇を固めている。
脚本は、今年1月紹介『魔女の宅急便』などの奥寺佐渡子、
監督は2010年12月紹介『毎日かあさん』などの小林聖太郎が
担当した。
『神童』の映画化が公開された頃は、テレビドラマの発信で
クラシック音楽がテーマの作品がブームになっていた。その
ブームは沈静した感じもするが、2012年12月紹介『さよなら
ドビュッシー』や、昨年には題名が『リトル・マエストラ』
という作品も全国公開されている。
実は昨年の作品については、試写は観せて貰ったがここには
アップしなかったものだ。それは何と言うか作品の全体にお
いてクラシック音楽の演奏に対する心構えができていないよ
うな、単なるブームの後追いをしているだけの感じがして、
正直なところは多少鼻についてきたりもしていた。
しかし本作を観ていて、これは本物、若しくは本物の感じが
味わえる作品だと思えた。演奏される曲目はベートーベンの
「運命」とシューベルトの「未完成交響曲」の2曲だけ、そ
の2曲の演奏を完成させて行く過程が、織り込まれる様々な
人間ドラマと共に見事に描かれて行く。
その進歩して行く過程。また様々なテクニックなどが巧みに
物語に織り込まれて、学べる点も数多くあったし、さらには
エンターテインメントとしても優れた作品になっていた。ま
た後半の「運命」の演奏が始まった途端、「あれ、おかしい
?」と思えた自分も嬉しかった。
公開は来年1月31日から、全国ロードショウが予定されてい
る。
10月12日(日)
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