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On the Production
by 井口健二
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■ハル・ハートリー、黒執事、神奈川芸術大学映像科研究室、ゼウスの法廷、マイティ・ソー2、トップ・オブ・ザ・レイク、オッド・トーマス
2008年11月紹介『ポチの告白』などの高橋玄監督の新作。前
の作品では警察行政の腐敗を真っ向から描いた監督が、今回
は司法(裁判)の現実を暴き立てる。
主人公は婚約者が裁判所判事という女性。それは周囲からは
憧れの目で見られるが、現実は常時300件もの訴訟を抱えて
逢瀬の場にも仕事を持込み、一般社会からは隔絶した生活を
送る婚約者の姿だった。
そんな主人公が大学サークルの同窓会に出席し、そこで大学
時代に付き合っていた男性と再会する。そして奔放に生きる
男の姿に憧れも再燃させてしまう。こうして男との関係を続
けた彼女は判事との婚約解消も考え始めるが…
雨の日、男の住まいのアパートの階段上でもみ合いになった
彼女は、誤って男を転落・死亡させてしまう。こうして彼女
は重過失致死罪で起訴されるが、その裁判の判事は元婚約者
が希望して担当することになる。
本来、被告人の親族または元親族が裁判の判事を務めること
はできないが、本件の場合はまだ婚姻届を出していないため
に可能なのだそうだ。そんな法律の穴を突いたようなドラマ
が展開される。
勿論これは現実には有り得ない展開だが、脚本も執筆の高橋
監督が描くのは司法の矛盾であり、そこには矛盾を受け入れ
る元同僚の検察官や、矛盾を追求する恩師の弁護士なども配
されて実に見事なドラマが描かれている。
出演は、今月紹介『御手洗薫の愛と死』などの小島聖、昨年
4月紹介『道−白磁の人−』などの塩谷瞬(ただし台詞は、
全編で声優の椙本滋が吹き替えている)。
他に、野村宏伸、川本淳市、出光元、風祭ゆき、吉野紗香、
速水今日子。さらに冤罪被害救済活動を行っている元警察官
で評論家の仙波敏郎、三池崇史らを輩出したプロデューサー
の伊藤秀裕らが脇を固めている。
日本の刑事裁判では有罪判決が99.9%なのだそうで、裁判官
(判事)はほぼ検察の言いなりの裁判判決を繰り返している
そうだ。その矛盾を追求するのが本作の目的となっている。
しかしドラマは基本的に、裁判官と被告という立場になった
男女のラヴストーリーであり、そのオブラートも実に巧みに
機能した作品。そこには主演した小島聖の魅力も存分に発揮
されていた。
それにしても刑事事件で起訴されたらほぼ100%有罪という
恐怖政治が施行されている現実は、今まで考えていた以上に
恐ろしい状況で、それは今までにもいくつかの映画作品で描
かれたいたものではあるが、今回はそれが最も明白かつ強力
に提示された作品と言えそうだ。
公開は3月8日から、東京はシネマート六本木でロードショ
ウが予定されている。

『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』
               “Thor: The Dark World”
2011年5月紹介『マイティー・ソー』の続編。ソーは2012年
6月紹介『アベンジャーズ』にも登場したが、マーヴェル・
コミックスのヒーローたちが勢揃いする作品は本作から見る
と傍系で、本作は本来の続編となるものだ。
その物語は太古に始まる。ソーの父王オーディンは闇世界の
支配者マレキスを打ち倒し、闇の基となるダーク・エルフを
封印して宇宙に光をもたらした。そしてその封印場所は極秘
とされていた。
一方、ソーが去り失意の恋人ジェーンは天文物理学の研究に
没頭していた。その彼女は地球規模の重力異常を検知し、原
因を調査する内に彼女が辿り着いたのは次元の狭間の洞窟。
そこで何かが彼女の身体に取り込まれる。
その危機を救ったのはまたしてもソーだった。彼はジェーン
を救うため彼女をアスガルドに伴う。しかしそれは宇宙に最
大の危機をもたらす。復活したマレキスがジェーンに宿った
ダーク・エルフを追って来たのだ。
数万年に1度の宇宙を構成する7つの世界が直線に並ぶ時。
その時にダーク・エルフを開放すれば宇宙は再び闇に閉ざさ
れる。この危機にオーディンとソーが立ち向かう。そしてそ
こにはソーの弟ロキも関っていた。
出演は、2011年作、2012年作に続いてソーを演じるクリス・

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12月15日(日)
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