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On the Production
by 井口健二
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■ダ・ヴィンチ・デーモン、ミトン+こねこのミーシャ、御手洗薫の愛と死、小さいおうち、ノー・ヴォイス
から、この映画に対する真面目さはその所以なのだろう。さ
らに映画でも、すでに国際映画祭の正式招待など実績を挙げ
ている監督でもあった。
出演は、吉行和子とロックバンドSOPHIAの人気ヴォーカリス
ト松岡充。他に小島聖、松重豊。さらに益岡徹、松下由樹ら
が脇を固めている。
吉行は今年9月紹介『燦燦』も良かったが、周囲に参考が多
かったかもしれない本作の役柄も巧みに演じている。さらに
本作では、女流作家がゴーストライターになる心理も巧みに
表現しており、特に仕事に行き詰まった作家が、他人名義で
復活する心理は納得できる感じに描かれていた。
また最後に女流作家が新人作家を諭すシーンは、ある意味で
最近の日本文学の傾向に危惧を述べている感じでもあり、こ
れは脚本も執筆した監督の日本文学及び日本映画に対する警
鐘のようにも感じられた。これは僕も同意見なので特に納得
したものだ。
公開は1月18日から、東京は有楽町スバル座ほかにてロード
ショウされる。

『小さいおうち』
2010年、第143回直木賞の受賞作でベストセラーにもなった
中島京子原作の映画化。『男はつらいよ』シリーズなどを手
掛け、家族映画の名手とも言われる山田洋次監督が、初めて
家族の秘密を描いたと言われる作品。
物語は、1人の女性が大学ノートに書き残した自叙伝の形で
語られる。
昭和10年、当時は花嫁修業ともされた女中奉公で彼女は山形
から東京に出てくる。そして最初の1年は小説家の家に奉公
し、そこからの推薦で東京郊外の丘の上に建つ赤い屋根の家
にやって来る。
その家はまだ若い主人が建てたもので、家には若く美しい妻
と、小児麻痺に罹りリハビリのマッサージを続けている幼い
息子が暮らしていた。そんな彼女の日課の一つは、その子を
神田の治療院まで連れて行くことだった。
そんな暮らしの中で主人の妻からマナーや言葉遣いも学び、
一家の信頼も得るようになった彼女だったが、その一家に波
風が立ち始める。それは主人の会社の新年会で、部下の男性
が家を訪れたことから始まる。
丙種合格で徴兵を免れている男性は、美術学校出で戦意高揚
の周囲の男性たちと異なる優しい心の持ち主だった。そして
闘病を続ける息子も気遣ってくれる男性に女主人の心が揺ら
いで行く。その姿を見ても何もできない女中だったが…。
出演は、松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆。さらに
妻夫木聡、倍賞千恵子。また、橋爪功、吉行和子、室井滋、
中嶋朋子、ラサール石井、林家正蔵、米倉斉加年らが脇を固
めている。
この原作本には何とも複雑な気分が付き纏う。バージニア・
リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』は、1952年のディ
ズニー短編アニメーション“The Little House”も含めて僕
は大好きな物語だし、その名作と同じ題名はいかがなものか
と思ったものだ。
従って原作本は手に取ることもなかったが、今回映画化を観
ていると成程という感じになってきた。その絵本はあくまで
も家の話で、絵自体が家の外観とその周囲の様子を描き続け
ているものだが、中島京子の作品はその家の中で起こってい
たことを描いている。
しかもこれは、視点は違いこそすれ、やはり「ちいさなおう
ち」そのものの話であって、これが絵本の題名を借りてでも
原作者が描きたかったものだと納得できる物語だった。そし
て映画では、昭和10年から戦争に向かう日本人の暮らしぶり
が見事に再現されていた。
公開は1月25日から、全国一斉ロードショウされる。

『ノー・ヴォイス』
2012年12月紹介『ひまわりと子犬の7日間』と同じ飼い主に
捨てられたペットの状況を描いた作品。
主人公はそれなりの顔立ちだが、手に職もなく、彼女もいな
い、はっきり言えばいい加減な男。そんな彼がある日、草む
らに捨てられた仔犬を拾う。そして住まいのアパートに連れ
帰るが、隣人からペット禁止と言われてしまう。
彼はその仔犬を換金しようと考えていたが、思惑通りには行
かず、彼は仔犬を保健所の前に捨ててしまう。しかし不思議

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12月01日(日)
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