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On the Production
by 井口健二
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■グランドピアノ、赤々煉恋、光にふれる、ファルージャ、おじいちゃんの里帰り
されものだが、今度は一般公開が行われることになり、試写
が行われている。こういう作品が日本の観客にもしっかり受
け入れられるようになって欲しいものだ。
公開は来年2月8日より、東京はヒューマントラストシネマ
有楽町、シネマート新宿ほか、全国ロードショウとなる。
『ファルージャ』
2004年、自衛隊イラク派遣の最中に起きた日本人人質事件を
題材にしたドキュメンタリー。
事件は1週間ほどで解決し、3人は無事解放されて帰国を果
たす。しかし日本に帰ってきた3人にはマスコミ主導の激し
いバッシングが待ち構えていた。
正直に言って観る前にはかなりの躊躇があった。事件の当時
に自分が何をした訳でもないが、バッシングという言葉には
何もしなかった自分に後ろめたさも感じるし、それを今さら
蒸し返されることに罪悪感もあった。
しかし作品を鑑賞して、そのバッシングを耐え抜いた2人の
方(3人目のフリーカメラマンは今も世界で活動中で取材は
叶わなかったそうだ)の姿には感銘を覚え、自分自身も浄化
されるような清々しさも感じられた。
事件では、発生から3日後には犯人側から「拉致されたのが
人道支援家であることが判明したので開放する」旨の声明が
発せられるが、僕は当時その声明が報道された記憶がない。
実はその声明には日本の政府への痛烈な批判含まれていた。
そのため声明の報道が隠された可能性も感じるが、この報道
がちゃんとなされていれば、その後の事態もかなり違ったも
のになっていた可能性は否めない。同様の日本の報道の不透
明さは、今年7月紹介『標的の村』でも感じたばかりだ。
一方で当時の日本国内の窓口だった北海道事務所には、多数
の批判のFAXが届いたと報道され、それがバッシングの引
き金となる。ところが実際は批判500通に対し支持は800通で
支持の方が多かったという証言も登場する。
これを見ると、バッシングが何らかの意志の下で作為的に演
出されたことも伺える。現在国家機密の漏洩に対する罰則の
法律制定が進む中で、こういう国民が知るべきものも隠され
てしまうことには暗澹とした気分になった。
そのバッシングの引き金を報道した新聞記者には取材は叶わ
なかったようだが、別の当時のニュースキャスターは、自分
で数えたという上記の批判と支持の数を挙げながら、日本の
マスコミの政府ベッタリの体制も証言している。
という日本の未来に暗澹とさせられる作品だが、作品では、
人質の今井紀明さんが、バッシングで引き篭りになった自ら
の体験を見つめて、定時制高校生に対する中退防止の活動を
進める様子が描かれ、未来に向かう姿も紹介される。
またもう1人の高遠菜穂子さんは今でもヨルダンやイラクで
医療支援活動を続けており、特に現地まで赴いた取材では、
米軍が投下した劣化ウラン弾の影響とみられる先天異常児の
問題など、戦争がまだ終っていな現実が報告される。
この2人の姿には、日本の未来に対する希望も与えて貰える
作品でもあった。
公開は12月7日から、東京は新宿バルト9他にて1週間限定
で行われ、以降は全国の劇場で順次上映される。
『おじいちゃんの里帰り』
“Almanya - Willkommen in Deutschland”
1960年代に始まったトルコからドイツへの出稼ぎ労働者で、
その100万1人目だった男性の物語。
主人公はトルコ東部の村に妻と3人の子供を残してドイツに
出稼ぎに来ていた。やがて家族も呼び寄せ、ドイツで4人目
の子供も授かった彼は、勤勉に働いてそれなりの成功も収め
たようだ。
そんな主人公は妻の要望でドイツ国籍も取得するが、本人は
あまり乗り気ではない。それでも妻の言うまま国籍は取得す
るが…。家族の揃ったそのお祝いの席で彼は突然、「故郷に
家を買ったから、それを見に行こう」と宣言する。
ところが家族の中には不況下で職を失った息子や、大学生な
のに妊娠してしまった孫娘。さらに母親がドイツ人で自分の
アイデンティティーに迷い始めた幼い孫などもいて、旅行の
プランはなかなか纏まらない。
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11月10日(日)
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