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On the Production
by 井口健二
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■第26回東京国際映画祭《コンペティション部門》
2月紹介『抱きたいカンケイ』に出ていたというジェイク・
ジョンスン、今年6月紹介『エンド・オブ・ウォッチ』など
のアナ・ケンドリック、2009年9月紹介『きみがぼくを見つ
けた日』に出ていたというロン・リヴィングストン。特に問
題のない作品だが、それ以上でも以下でもなかった。
『レッド・ファミリー』“붉은 가족”
2008年3月紹介『ブレス』などのキム・ギドク監督が原案と
脚本、製作総指揮と編集も務め、フランスで学んだという新
鋭イ・ジュヒョンが初監督した作品。物語の舞台は郊外の住
宅地。口喧嘩の絶えない粗雑な一家の隣に、実に礼儀正しい
家族が引っ越してくる。しかしその家族の実態は、脱北者の
粛清を行う北朝鮮のスパイだった。映画はこのスパイ一家を
中心に描くもので、それはかなり戯画化して描かれている。
一方の韓国の一家もかなり批判的に描かれており、何という
か両者の痛みも感じられる作品だ。ただ全体の雰囲気は生温
くて、特に結末には唖然とした。本作は観客賞を受賞。
『オルドス警察日記』“警察日记”
内モンゴル自治区オルドス市で、市の公安委員長まで務めた
警察官の姿を描く実話に基づく作品。主人公は高校教師から
警察官に転じた男性。彼は交通警官から刑事に転属し、殺人
事件から労働争議まで様々な案件に携わって行く。その間に
彼は賄賂などを一切排除し癒着にもメスを入れる。その一方
で優秀な人材も積極的に起用したが、仕事優先の生活は家庭
を顧みないまま終わってしまう。映画はその伝記記事を頼ま
れたジャーナリストを通じて描かれ、最初は英雄を描くこと
に批判的だった作家が最後は納得するまでが、観客にも判り
易く描かれている。本作には最優秀男優賞が贈られた。
『エンプティ・アワーズ』“Las horas muertas”
メキシコ湾に臨む港湾都市ベラクルスの海岸に建つモーテル
を舞台にしたちょっと切ない青春ドラマ。主人公は入院した
叔父の代わりにそのモーテルの管理を任される。それは若い
少年には多少過酷な仕事だが、少年もそれなりに理解はして
いる感じだ。そしてそのモーテルにやって来る客や、道路の
反対側でヤシの実を売る少年、さらに寝具の洗濯係の女性な
どが絡んで物語は進んで行く。物語には特に大きな事件もな
く、女性客との関係では2002年6月紹介『天国の口、終りの
楽園』なども思い出させる作品だった。本作は最優秀芸術貢
献賞を受賞。
* *
なお今年はスケジュールの関係で、コンペティション作品
中の日本映画『ほとりの朔子』を観ることができなかった。
ただしこの作品は日本公開も決まっているようなので、試写
を観て改めて紹介の機会ができればと思っている。
最後に今年の各賞は以下のようになった。
東京 サクラ グランプリ/東京都知事賞
『ウィ・アー・ザ・ベスト!』
審査員特別賞 『ルールを曲げろ』
最優秀監督賞
ベネディクト・エルリングソン『馬々と人間たち』
最優秀女優賞
ユージン・ドミンゴ『ある理髪師の物語』
最優秀男優賞
ワン・ジンチュン『オルドス警察日記』
最優秀芸術貢献賞 『エンプティ・アワーズ』
観客賞 『レッド・ファミリー』
10月26日(土)
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