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On the Production
by 井口健二
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■シャンボンの背中、Miss ZOMBIE、あの日見た花…、ある愛へと続く旅、009-1、スクールガール…、ランナウェイ、許されざる者
物語の始まりは現代のローマ。その町で暮らす1人の女性に
サラエボからの電話が繋がる。それは彼女の亡き夫が撮った
戦場の写真を展示するというもので、彼女は息子と共にサラ
エボに向かうことにする。その息子は難しい年頃で、彼女に
は反抗的だったが。
こうしてサラエボに向かった彼女の胸に過去がよみがえり始
める。それは1980年代のサラエボに留学し、夫と巡り合った
平和で幸せな日々と、90年代の戦火の近付くサラエボで自ら
身篭ることが無理と判り、代理母となる女性に出産を託した
苦難の日々。
そして戦火の中で誕生した乳飲み子と共にイタリアへの脱出
を図った時、カメラマンの夫は戦場に残ることを決断した。
それはジャーナリストの使命感だけだったのだろうか。その
謎が徐々に解き明かされて行く。
ボスニア戦争を描いた作品では、先にアンジェリーナ・ジョ
リー監督による『最愛の大地』“In the Land of Blood and
Honey”という作品も公開されるが、戦争を真正面からに描
いたハリウッド作品に対して本作では、その戦火の中で苦悩
の日々を送った人々の姿が描かれる。
それは真正面から描いた作品の方がアピールも簡単だし、理
解もされ易いだろうが、本作の方がより強く当時の人々の苦
悩が伝わって来るし、本当に起きた出来事がより正確に伝え
られている感じがした。
映画の中でも、ほんの数マイルの海で隔てられたイタリアと
旧ユーゴスラビアが対比されるが、正しく眼と鼻の先の場所
で起きている悲劇。そんな現代の悲劇が見事に描かれた作品
だった。そしてそこに崇高な愛の物語が描かれる。
共演は、昨年10月紹介『ダーケストアワー・消滅』などのエ
ミール・ハーシュ。他に、ジェーン・バーキン、2010年10月
紹介『ソフィアの夜明け』に出ていたというサーデット・ア
クソイ、サラエボ出身のアドナン・ハスコヴィッチ、監督の
息子のピエトロ・カステリットらが脇を固めている。
物語はフィクションだが、その周囲で起きる悲劇は実際にあ
った出来事。その絡み合いが実に巧みで、戦争の悲劇が克明
に伝わってくる作品だ。

『009-1 THE END OF BIGINNING』
石ノ森章太郎生誕75周年記念と銘打たれた実写作品。
時代背景は、経済活動の混乱や宗教問題などで世界が再び東
西ブロックに分裂した近未来。そのブロックの境界線に位置
するJ国は一応ウェストブロックに所属しているが、国内は
裏社会に支配され、東西ブロックの諜報員が入り乱れて暗躍
する無法地帯だった。
そんなJ国に設置されたウェストブロックの特務機関「ゼロ
ゼロ機関」に所属する主人公ミレーヌは、全身に隠し武器が
内蔵され、聴覚や視覚も強化された女性サイボーグ。彼女は
奴隷売買組織の摘発し人々を解放するが、その際に1人の青
年が口ずさんだメロディーが頭から離れなくなる。
そのミレーヌの次の任務は、「ゼロゼロ機関」の頭脳という
べきDr.クラインの警護。ところが研究所がイーストブロッ
クの部隊に襲われ、博士を拉致されてしまう。しかしそこで
再び青年と巡り合ったミレーヌは「ゼロゼロ機関」が進める
新たな計画を知るが…
出演は、元「ミス・マガジン2003」で昨年10月紹介『ミロク
ローゼ』などの岩佐真悠子、2010年『仮面ライダー』などの
木ノ本嶺浩。他に2008年2月紹介『Girl's BOX』などの長澤
奈央、杉本彩、竹中直人らが脇を固めている。
監督は、2009年11月紹介『大怪獣バトル/ウルトラ銀河伝説
THE MOVIE』などの坂本浩一が担当している。
原作の発表当時は冷戦の只中で東西ブロックは現実だった。
でもまあ混沌とした今の時代だと、何時この時代背景が復活
してもおかしくない感じはする。とは言え基本Bムーヴィと
いう造りの作品で、ここに大きな期待は寄せないで観てもら
いたい。
そういう眼で観れば、サイボーグの活躍を描くVFXなどは
以前のこの手の作品に比べると数段にスマートになっている
し、お話や男女の絡みの演出なども以前よりはまともに描か
れるようにはなっているので、それなりには楽しめる作品に

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08月10日(土)
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