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On the Production
by 井口健二
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■「フランス映画祭2013」
旧東欧圏から脱出して不法滞在している人々を巡る物語。主
人公は人道的な見地から収容者の強制送還の阻止を図るが…
不法滞在者の収容と強制送還の問題は、日本の事情も何本か
のドキュメンタリーで観たが、本作も政治と人道のせめぎ合
いを鮮烈に描いていた。
「春」“Le printemps”
春の到来を告げる森の様子をCGIアニメーションで描いた
15分13秒の作品。様々な楽器を模した造形が、華やかな音楽
を奏でながら行進する。中にはちょっと象徴的なものも登場
しているようだったが、僕の知識では理解できなかった。
以上合計で約135分だが、映画祭のみの上映となる。
『森に生きる少年』“Le Jour des Corneilles”
アヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映された作
品。
深い森の奥で男手一つで育てられた少年は、父親から森の外
は行ったら命のない魔界だと教えられていた。一方、少年に
は様々な森の仲間がいて、緊急の時にはアドヴァイスもして
くれる。そして父親が大怪我をして…
キャラクターには『もののけ姫』に通じるところもあり、ジ
ブリの影響が色濃く見える作品だった。ただし物語はジャン
=フランソワ・ボーシュマンの原作に基づき、地に足のつい
たものになっている感じだった。
監督は、本作が初長編作品となるジャン=クリストフ・デッ
サン。声優はジャン・レノや2010年に亡くなったクロード・
シャブロールらが担当している。因にジャン・レノは、宮崎
駿監督の『紅の豚』でフランス語版の主人公を担当したこと
があるそうだ。
日本での一般公開は未定。
『ローラ』“Lola”
2009年1月紹介『シェルブールの雨傘』などの名匠ジャック
・ドゥミ監督による1961年のデビュー作。
港町ナントを舞台に、街の若者とキャバレーの踊り子、それ
に海軍の水兵や街に舞い戻った男などがちょっと入り組んだ
恋模様を描いて行く。
その街で退屈な毎日を送っていた主人公は、幼馴染の踊り子
と10年ぶりに再会し、彼女に恋心を伝えるが、彼女は7年前
に別れた男の影を追っていた。
ドゥミは2年後の『シェルブール』に本作の主人公を再登場
させ、7年後の『モデル・ショップ』では踊り子の後の姿を
描いており、それらの作品の原点とも言える物語がミシェル
・ルグラン作曲、アニエス・ヴァルダ作詞の音楽と共に綴ら
れている。
出演は、踊り子役にアヌーク・エーメが扮してドゥミが当て
書きしたというキャラクターを見事に演じている。
上映は仏米の映画財団によってディジタル修復された映像で
行われるが、日本での一般公開は未定となっている。
『タイピスト!』“Populaire”
1950年代を背景にした若い女性のサクセスストーリー。
主人公は田舎の雑貨屋の娘。父親が偶然仕入れたタイプライ
ターに興味を持ち、それは彼女を都会に連れ出す鍵となる。
そして人差し指だけの早打ちで秘書の座を射止めた彼女は、
敏腕コーチの指導の許「早打ち世界大会」への挑戦を開始す
るが…
女性タイピストの話では2003年6月紹介『セクレタリー』な
ども思い出すが、それに勝るとも劣らない女性の痛快な活躍
が描かれていた。
出演は、2005年9月紹介『ある子供』などのデボラ・フラン
ソワと、2011年7月紹介『ハートブレイカー』などのロマン
・デュリス。監督は、本作で長編デビューのレジス・ロワン
サル。
なお、本作は試写の時点では原題で紹介されたが、その後に
邦題が決定した。日本公開は8月に予定されている。
『In the House(英題)』“Dans la maison”
2010年9月紹介『Ricky』などのフランソワ・オゾン監
督による最新作。本作は昨年のサン・セバスチャン国際映画
祭で最優秀作品賞及び最優秀脚本賞を受賞している。
主人公はかつて作家を志したこともある国語教師。しかし今
は、凡庸な生徒たちの作文の採点に辟易する毎日だ。そんな
彼の前に才気溢れる作文が登場する。その文章に魅せられた
主人公はそれを書いた生徒の個人指導を始めるが、そこには
思いもよらない落とし穴が待ち構えていた。
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06月20日(木)
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