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On the Production
by 井口健二
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■オース!バタヤン、スタンリーのお弁当箱、ジャックと天空の巨人、インポッシブル、容疑者X、DRAGON BALL Z、隣人、旅歌ダイアリー
おける助演VFX賞」を受賞して、どのような映像なのか気
になっていた作品だ。
ただし本作は昨年の東京国際映画祭の「ワールドシネマ」で
も上映されて、その際に僕は見逃したが、観た人からは日本
公開は難しいのではないかとも言われていた。
物語は、2004年12月26日のスマトラ島沖地震で発生した津波
を描き、その津波に巻き込まれてバラバラになった家族5人
が奇跡的に全員生還を果たしたという俄には信じがたい実話
を映画化している。
その一家が父親の仕事の関係で暮らしていた日本から、クリ
スマス休暇でプーケットのリゾートにやって来たのは24日。
そして3日目、僅かな揺れを感じた後で鳥たちが一斉に飛び
立ち、間髪を入れずに津波が襲ってくる。
その津波はあっという間にホテルの建物をも乗り越えるが、
その時、父親は7歳と5歳の幼い子供と一緒におり、長男は
比較的母親の近くにいた。そして第2波の津波が襲ってきた
とき、長男と母親は位置を確認し合いながら流されたが…
同じ津波の関連では、2010年11月紹介、クリント・イースト
ウッド監督の『ヒアアフター』を思い出すが、プールの水の
ような澄んだ流れの中で描かれたハリウッド作品に対して、
本作の濁流はこれが現実と思わせるものだ。
その現実は、2011年3月11日を経た後では、正視することも
心苦しくなるものだが、その現実を描くこともある意味での
鎮魂と思わせてくれるような描かれ方の作品になっている。
監督は、2008年9月紹介『永遠のこどもたち』のファン・ア
ントニオ・パヨナ。脚本も同作を手掛けたセルシオ・G・サ
ンチェス。同作の製作者のベレン・アティエンサがラジオで
聞いた一家の話から企画が始まり、一家との綿密な話し合い
の結果で生み出された作品とのことだ。
共演は、ユアン・マクレガーと、映画は初出演だがロンドン
・ウェストエンドの舞台には立ったことがあるという1996年
生まれのトム・ホランド。他にジェラルディン・チャップリ
ンが出演している。
なお津波シーンの撮影には159tの水が使用され、準備期間な
どに1年を費やし、6つの特殊効果会社が協力して作り上げ
ているそうだ。

『容疑者X・天才数学者のアリバイ』“용의자X”
東野圭吾が2005年直木賞を受賞した原作「容疑者Xの献身」
を韓国で映画化した作品。
同じ原作は、2008年に日本でも映画化されており、その作品
の試写会には呼ばれなかったが一般公開で鑑賞した。その際
にも感動した記憶があるが、本作の感動はさらにそれを上回
るものになっていた。
事件の発覚は川原で焼かれた遺体。特に指先が丁寧に焼かれ
て指紋などの消された遺体だったが、刑事らの執拗な捜査で
身元は判明する。しかし第1容疑者とされる女性には確固と
したアリバイがあった。そして捜査の過程で意外な真犯人が
浮かび上がってくるのだが…。
日本での映画化は、当時評判のテレビシリーズとの関係もあ
り、今回の映画化には登場しない人物が主役で、その視点か
ら事件が描かれていた。これは原作も同じのようなのだが、
本作ではその原作に縛られない大胆な脚色が行わた。
それは敢えて本来の主役を外すことで、物語の中心を事件の
全てを実行する犯人の側に移し、その葛藤などを克明に描い
ているものだ。これは日本映画を観ている時にも犯人の心情
には感銘したが、本作ではそれがさらに深く描かれた。
そしてそれにより、現代では死語とも言われる「愛」が見事
に謳い上げられた作品になっている。
出演は、2005年8月紹介『ARAHAN』などのリュ・スン
ボムと、2011年7月紹介『ホームランが聞こえた夏』などの
チョ・ジヌン、2008年3月紹介『光州5・18』などのイ・
ヨウォン。
他に、2007年6月紹介『私のちいさなピアニスト』などのキ
ム・ボラ、2010年11月紹介『戦火の中へ』などのキム・ユン
ソンらが脇を固めている。
監督は、2001年キム・ギドク監督『受取人不明』などの出演
者で監督4作目のパン・ウンジン。2005年の第2作では新人

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03月20日(水)
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