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On the Production
by 井口健二
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■桃まつり−なみだ−、スカイラブ、グッバイ・ファーストラブ、ベルヴィル・トーキョー、モンスター、闇の帝王DON、命ある限り、YES/NO
彼女の10年に及ぶ出来事が綴られる。その少年は南米に行く
ことを夢見て、彼女の引き止めも虚しく彼は旅立つ。そして
彼女は手紙で別れを告げられる。
出演は2009年『青髭』などの新星ローラ・クレトンと、昨年
7月紹介『ウェイ・バック』に出ていたというセバスティア
ン・ウルゼンドフスキー。監督はデビュー作の『すべてが許
される』(2007年)と合わせ3部作としているようだ。

『ベルヴィル・トーキョー』“Belleville-Tokyo”
ソルボンヌ大学で修士号を取得。その論文のテーマが1961年
アニエス・ヴァルダ監督の『5時から7時までのクレオ』と
いうエリース・ジェラールによる監督デビュー作。
パリに住む若い夫婦。夫は映画評論家でヴェネチアに取材に
向かうが、その出発の空港で妻に「向こうに恋人がいる」と
告げる。そして帰ってきた夫を妻は追い出すが…。やがてよ
りを戻した夫は、今度は東京に取材に行くことになる。
出演は、昨年6月10日付「フランス映画祭2012」で紹介した
『私たちの宣戦布告』のヴァレリー・ドンゼッリとジェレミ
ー・エルカイム。実生活でも以前は夫婦だった2人が微妙な
夫婦関係を演じている。
なお、映画の中で妻は名画座に勤めているが、監督も名画座
に勤務していたことがあるそうで、映画館の事務室に貼られ
たポスターなど映画ファンには面白いものがいろいろ見えて
くる作品でもあった。
紹介した3作品は、3月30日より東京渋谷にあるシアター・
イメージフォーラムで上映される。

『モンスター』
2010年『ボックス!』などの映画化のある百田尚樹が、同年
に発表した小説の映画化。その映画化に、監督・大九明子、
脚本・高橋美幸(2008年11月紹介『プライド』など)、撮影
・大沢圭子、特殊メイク・江川悦子(昨年8月紹介『アウト
レイジ ビヨンド』など)の女性陣が挑んだ。
物語の舞台は、海辺の田舎町に建つ瀟洒なレストラン。そこ
には美貌の女性オーナーを一目見ようと、連日数多くの男性
客で賑わっていた。そんな客席をモニターカメラで見つめる
女性オーナーは、ある日1人の男性客に目を止める。
その客の座るテーブルへと女性オーナーは歩みを進めるが、
そこには彼女の暗く澱んだ過去への思いが秘められていた。
幼い日の思い出、そして青春の記憶。そこから彼女の壮絶な
人生が描かれて行く。
出演は、高岡早紀、加藤雅也、村上淳、大杉漣。
原作者の百田は、映像的な作品だが映画化はハリウッドでな
いと無理だろうと思っていたそうだ。しかしその映画化を、
日本映画の女性たちが見事に実現している。
実は、同じ日に続けて『コードネーム・ジャッカル』という
韓国映画を観ていて、その中に主題ではないが同様の設定が
有り面白くなった。ただし韓国映画ではその具体的な描写は
避けていたもの。そんな困難な題材に果敢に挑戦した日本の
女性映画人たちにも賞賛を送りたい作品だ。
なお本作は4月27日から東京は丸の内TOEI他で公開の予定だ
が、大九監督の作品ではもう1本、『ただいま、ジャクリー
ン』という作品が3月9日から渋谷オーディトリアムで1週
間限定レイト公開されている。
こちらは東京渋谷の映画美学校・脚本コースの第1期生・村
越繁の作品を映像化したもので、ちょっとファンタスティッ
クな展開を含む作品になっている。
物語は、幼い頃にバスの事故で両親を亡くした少年と少女を
主人公にしたもので、同じ事故で死亡した腹話術師の人形を
巡ってある奇跡が起きるもの。
腹話術の人形が意思を持つというお話では、星新一の『夢魔
の標的』を思い出すが、本作の物語の人形はそれほど積極的
には動かない。しかしある状況でそれは奇跡を起こす。脚本
家が星氏の作品を知っていたかどうかは判らないが、本作も
素敵な作品になっていた。
出演は、2012年『ヒミズ』でヴェネチア国際映画祭新人賞を
受賞した染谷将太と、2011年『3年B組金八先生』などの趣
里。他に声優の夏目凛子、腹話術師のいっこく堂らが脇を固
めている。


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03月10日(日)
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