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On the Production
by 井口健二
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■コズモポリス、野蛮なやつら、ふたたびの加奈子、コドモ警察、食卓の肖像、フリア/よみがえり少女、孤独な天使たち、シュガーマン
とは言うものの、主役を演じるのは元々が子役たちだから、
派手なアクションなどができる訳もなく、お話も甘いところ
だらけという作品だ。それにパロディの部分も設定を活かし
切っているとは言い難く、脚本をちゃんと練ればもっと良い
作品が生まれるのではないかという気持ちも生じる。
しかし本作に期待されるのは、そのような高いレヴェルでは
なく、恐らくは健気な子役たちに感じる癒しであり、絶対に
殺伐としたものにはならないであろうという安心感だと考え
られる。従って本作は、テレビ版を完璧に踏襲しなくてはな
らない宿命を持つものなのだ。
その点において本作は、充分にその目的を果たしているし、
それはテレビの視聴者を映画館に呼び寄せる目的には応えて
いるものと言える。まあそれ以上でもそれ以下でもない作品
ではあるが…。
出演は、鈴木福、勝地涼、本田望結、鏑木海智、青木勁都、
秋元黎、相澤侑我、竜跳がシリーズと変わらず特殊捜査課の
メムバーとして登場。またマリウス葉、吉瀬美智子が本庁の
刑事らを演じている。
さらに映画版のゲストとして北乃きい、宍戸開、小野寺昭、
山本裕典、指原莉乃、佐藤二朗、ムロツヨシ、柳原可奈子ら
が出演。脚本と監督は、シリーズも手掛けている2009年8月
紹介『大洗にも星はふるなり』などの福田雄一が担当した。
鈴木福のデカ長役は『太陽にほえろ!』の石原裕次郎を髣髴
とさせるし、本田望結の女刑事役もニヤリとさせられるほど
巧みに演じられている。それに対する大人の俳優たちの演技
が、却って子供っぽく見えるのも面白いところだ。
『食卓の肖像』
1968年に起きた「カネミ油症事件」。その事件の現在に至る
経緯を追ったドキュメンタリー。
1968年というと僕は技術系の大学を目指して受験勉強をして
いた頃で、こういう事件には関心はあったはずだ。それで実
際に事件のことは憶えてもいるのだが、その後の経緯につい
てはとんと記憶がなかった。それは勿論、カネミ油と聞いて
油症事件を思い出す程度の記憶はあったが。
それが今回このドキュメンタリーを観させて貰って、その後
の経緯が何故ここまで関心を呼ばなかったのか、その背景に
も疑問を感じざるを得ない状況を知ることになった。
映画の冒頭には当時の新聞の切り抜きが提示され、事件後の
保健所の統計で被害者の数が14000人を超えていたことが明
らかにされる。ところが現在、事件の被害者と認定されてい
る患者の人数は2000人足らずだという。その理由は一体何な
のか?
しかも、油症の原因がPCBとダイオキシンの複合であり、
当時すでにダイオキシンの危険性やその影響が判明していた
にも拘らず、その後の患者認定がなされないばかりでなく、
認定患者の子供が明らかにその影響による障害を持っていて
も、その被害者認定は行われていないようだ。
その理由は一体何なのか?
作品は、そんな油症被害者の姿を、2000年から10年に亙って
追いかけたもので、作品の中では敢えて企業責任の追求など
はせずに、現在の油症被害者の置かれている状況や、そこに
至った経緯などが描かれている。そして現在もその後遺症に
苦しめられている実態が報告される。
監督は、早稲田大学シネマ研究会の出身で、企業のPR映画
の製作などに携わっていたという金子サトシ。
金子は2000年に油症被害者の現状を知り、現在はカネミ油症
被害者支援センター運営委員を務めながら本作を自主制作。
その作品が2011年キネマ旬報ベストテン文化映画の第10位に
選出され、今回の一般公開に漕ぎ着けている。
因に本作は、2010年8月に東京で最初の上映が行われたが、
2012年8月になって国会では「カネミ油症患者に関する施策
の総合的推進に関する法律」が可決、成立されており、本作
が世に問うた事に対しては反響があったようだ。
しかし事件はそれで決着するものではなく、真に被害者の救
済が実行されたのかなど、今後にも問題は山積のはず。そこ
は是非とも本作の続編で報告をしてもらいたいものだ。
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02月20日(水)
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