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On the Production
by 井口健二
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■ベラミ、さよならドビュッシー、サイレント・ハウス、カルメン故郷に帰る、アルバート氏の人生、君と歩く世界、チチを撮りに、PARKER
その実はストリッパー。当時はストリップを芸術と呼ぶ風潮
もあったから、ちょっと頭の弱い彼女はそんな風潮にも乗せ
られているのだろう。従って彼女に悪気はない。
しかし素朴な村の人たちにとってこれは大問題。最初は芸術
と聞かされて帰郷を応援していた小学校の校長も、その実態
を知って戸惑うことになる。そんなすったもんだが、信州の
大自然を背景に描かれる。
まあお話は他愛ないが、当時の世相や素朴な人々の心情など
も巧みに捉えられていて、さすが木下恵介作品という感じの
ものだ。そこには今は失われつつある良き時代の姿も、数多
く描かれている。
また映画の最初を最後には、1962年に全線廃線となった草軽
電鉄に主人公らが乗っているシーンが登場し、35mmカラーで
撮影された動態の姿は、鉄道マニアにはかなり貴重なものに
もなっている。
出演は、高峰秀子、小林トシ子、井川邦子、佐野周二、佐田
啓二、笠智衆。脚本も木下恵介が執筆し、音楽には黛敏郎と
木下忠司。また助監督には小林正樹、松山善三らの名前が並
んでいた。
作品は、かなり以前にテレビ放映で観ているが、ディジタル
上映とはいえスクリーンで観るのはまた格別のものだ。その
映像は鮮明で、色彩も極めて鮮やかだった。また音声も一部
を除いてノイズも少なくクリアに聞くことができた。
古き良き時代の作品だが、ノスタルジーだけではない、今の
時代にも通じるものも感じられる作品だ。
なお上映会では、特典映像となる『我が師に捧ぐ』と題され
たドキュメンタリーも上映された。
この作品は今回のリマスター版に向けた新予告編を制作する
本木克英監督が、師匠である木下監督の姿を追ったもので、
中では監督の実弟である作曲家の木下忠司氏に、『カルメン
…』に2人の音楽家が参加した経緯を聞いているなど、貴重
な証言も含まれていた。

『アルバート氏の人生』“Albert Nobbs”
2011年11月30日付「東京国際映画祭」で紹介の『アルバート
・ノッブス』が標記の邦題で一般公開されることになり、改
めてマスコミ試写を鑑賞した。
物語の舞台は、19世紀のアイルランド・ダブリン。その街の
ホテルに務めるアルバートは目当ての客も多く訪れる人気者
だったが、そのアルバートには人に言えない秘密があった。
それはその実体が女性であったということ。その時代に幼く
して親を失った女性が1人で生きて行くためには、「男性」
になるしか途はなかったのだ。
そんなアルバートに危機が訪れる。ホテルの改修に来たハン
サムなペンキ職人が、女主人の命令でアルバートの部屋に泊
まることになったのだ。しかし自らの実体が主人に知れると
首になると危惧したアルバートは、寝床にも気を使って潜り
込むのだが…。その行動がアルバートの人生に大きな転機を
もたらすことになる。
その一方でアルバートは、将来の夢のために自室の床下に小
金を貯め込んでいた。そしてその金額は夢の実現にあと一歩
と近づいていたが、そこにもある転機が訪れてしまう。
出演は、本作で第24回東京国際映画祭の最優秀女優賞を獲得
したグレン・クローズ。本作では脚本と製作も兼ねている。
他に、今年9月紹介『ウーマン・イン・ブラック亡霊の館』
などのジャネット・マクティア、2010年3月紹介『アリス・
イン・ワンダーランド』などのミア・ワシコウスカ。さらに
2010年10月紹介『キック★アス』のアーロン・ジョンスン、
『ハリー・ポッター』シリーズのマッド・アイ・ムーディ=
ブレンダン・グリースンらが脇を固めている。
監督は、2008年12月紹介『パッセンジャーズ』などのロドリ
ゴ・ガルシア。脚本にはクローズの他に、1991年のクローズ
主演作『ミーティング・ヴィーナス』などのガブルエラ・プ
レコップと、アイルランド出身のブッカー賞受賞作家ジョン
・バンヴィルも参加している。
なお本作は昨年の米アカデミー賞で主演女優賞と助演女優賞
の候補(他にメイクアップ賞も)になったが、いずれも受賞
は逸している。また、東京国際映画祭ではクローズが最優秀

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12月23日(日)
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