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On the Production
by 井口健二
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■サイド・バイ・S、ひまわりと子犬の…、悪人に平穏なし、次郎は鮨の…、さなぎ、エンド・オブ・ザ・W、ジャッジ・D、いのちがいちばん…
誌で世界のレストラン第6位に選出され、2005年に厚労省の
「現代の名工」として表彰。2007年ミシュランガイド東京で
三つ星を獲得、以来6年間その地位を保っている。
本作はその店主の姿を、1983年ニューヨーク生まれ、南カリ
フォルニア大学映画製作課程卒業で、2008年8月紹介『ブラ
インドネス』の制作過程を追ったテレビドキュメンタリーが
高評価を得たというデヴィッド・ゲルプが、長編デビュー作
として捉えている。
その作品では、料理評論家・山本益博の解説インタヴューを
交えて江戸前鮨を築地での仕入れから仕込みの様子など食客
に提供するまでの過程を追うと共に、その完成された鮨の美
しさなども堪能させてくれる。さらにミュシュランガイドに
選出された際の受賞式の様子なども紹介されている。
その一方で、父親の跡を継ぐ2人の息子の姿も紹介し、数寄
屋橋で2代目店主となる長男と、六本木に独立して店を構え
る次男の微妙な立場なども描かれる。因にゲルプ監督は父親
がメトロポリタン・オペラの総帥であるピーター・ゲルプ、
兄も映画監督とのことで、作品にはそんな監督自身の思いも
反映されているようだ。
なお試写会では、言わずもがなのところが多いとか、肝心な
ところが説明されていないなどと注文をつけている評論家ら
しき人物がいたが、料理の専門家でない僕等には実に解りや
すく、カタログ的に登場する鮨の姿などにも美しさを感じら
れたものだ。
もちろん藁で焼いてたたきを造るシーンなどは解説があって
もいいかとも思うが、鮨を全く知らない人たちに観せるには
これで充分だし、かえってウザい解説など不要な、正に鮨の
美しさが堪能できる作品だった。
『さなぎ』
2008年発表の『空とコムローイ〜タイ、コンティップ村の子
どもたち』という作品で、京都国際子ども映画祭長編部門の
グランプリを獲得している三浦淳子監督が、小学1年生の時
から不登校になっている少女の姿を、14年間に亙って追った
ドキュメンタリー。
作品の始まりで少女はすでに小学3年生になっていて、それ
までにあったのであろう様々な出来事は、登場する母親らの
発言のみとなっている。その辺が本当はよりドラマティック
であったかもしれないが、本作ではあえてそれは追わずに、
そこからの少女の立ち直りに重点が置かれている。
因に不登校の理由はいじめとかによるものではなく、原因は
不明。ただ素人目に見て、この少女は精神年齢が高かったの
だろうとは思う。それが多分周囲の子供たちと合わなくて、
頭痛などの症状を生み出していったのではないのかな。画面
を見ていてふとそんな感じがした。
しかし作品ではそのような原因の追求などもせず。少女の成
長の中で徐々に彼女自身が変って行く様子が撮されている。
それは試写会の後で行われたQ&Aの中で、監督は「遊んで
いるのを写しただけ」と答えていたが、それが見事にその成
長も捉えているものだ。
そしてその成長を促した学校や、家族・両親らの努力を巧み
に捉えた作品にもなっている。ただし、その部分の描き方も
間接的で、もっと具体的にその方策なども示して欲しかった
感じもするが、本作はそのような教育論が目的の作品ではな
い。
そんなまあちょっと回りくどい感じの作品ではあるが、現在
全国に12万人の小中学生が不登校になっているという現実を
考えると、この作品に描かれた様々なヒントが、きっとその
家族や先生方の役に立つと思われる作品。特に全国の先生方
には観て貰いたいものだ。
そしてそれは、原因追求などをセンセーショナルに描くより
も、正しく描かれた作品になっていると思えるし、それが何
よりの本作の価値であるとも感じられた。
なお作品は、少女が大学生になっている現在まで取材されて
おり、最後には少女自身の言葉で過去が振り返られている。
そこでもあえて細かいことは追求されないが、その全てが現
在の子供たちの置かれた状況を描いている作品のようにも思
われた。
『エンド・オブ・ザ・ワールド』
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12月16日(日)
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