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On the Production
by 井口健二
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■裏切りの戦場、北のカナリア、合衆国最後の日、僕の中のオトコの娘、カリフォルニア・ドールズ、拝啓愛してます、LOOPER、ゲットバック
その様子に、最初は引き篭りを脱したと喜ぶ家族だったが、
やがて事実が露見し、しかも周囲の住民にもそれを知る者が
現れて…
物語はかなりキワモノめくが、作品は結構まともに作られて
いて、意外と嫌味のない青春ドラマとして纏まりも良く完成
されていた。特に女装が露見してからの展開が、かなり優し
い眼差しになっているのも、観ていて気の休まるものだ。
脚本と監督は、2010年『失恋殺人』、2011年『CRAZY-ISM ク
レイジズム』が連続してモントリオール世界映画祭のFocus
on World Cinema部門に招待されている窪田将治。本作も同
部門に招待されたようだ。
主演は、2010年4月紹介『BECK』などの川野直輝。共演に、
同年8月紹介『桜田門外ノ変』などの中村ゆり、同8月紹介
『アワ・ブリーフ・エタニティ』などの草野康太、同7月紹
介『愛の言霊』などの河合龍之介。他に内田朝陽、山田キヌ
ヲ、柳憂怜、木下ほうか、ベンガルらが脇を固めている。
それにもう1人、エンドクレジットを見ていたら去年の湘南
ベルマーレでクイーンをしていた土方くるみの名前を発見。
元々女優さんということは知っていたが、窪田監督の前作に
も出ていたようで、活躍しているようだ。
実は前もって判っていたら鑑賞中も気にしたのだが、事後で
はどの役かも確認できない。多分主人公のお姉さんが働いて
いた喫茶店の同僚ウェイトレスだったと思われるが。
テレビでも女装者を見ない日はないような感じもするところ
だが、これが21世紀特有の現象かと言われると多少考えてし
まう。でもこれが文化として定着しつつあることは確かなの
だろう。
そんな状況をうまく捉えた作品だし、何よりそこに嫌味がな
く、優しく描かれているところは納得した作品だ。
『カリフォルニア・ドールズ』“...All the Marbles”
『合衆国最後の日』と共に11月3日から再公開されるロバー
ト・アルドリッチ監督による1981年の作品。1983年に他界し
た監督の遺作となった作品だ。
登場するのは、女子プロレスでタッグを組む2人の美女と、
そのマネージャー。マネージャーが運転するポンコツ車で地
方を巡業しているが、ある日、全米チャンピオンチームとの
エキジビションマッチで、事前の打ち合わせに拘らず本気を
出した2人は、勝負に勝ってしまう。
そこで手応えを掴んだ2人は次々に難敵を倒し、遂にはレノ
のMGMグランドホテルで開催される賞金1万ドルを賭けた
全米チャンピオンシップに挑戦することになるが…。それは
因縁の相手との再戦だった。そして3人は、その試合で一世
一代の勝負に出る。
『合衆国…』の時はアルドリッチ監督を男性映画の名匠と書
いたが、本作では女性を主人公にして見事なエンターテイン
メントを描いている。しかも女子プロレスという格闘技とも
お色気ともつかない舞台の中で、女性映画では描きにくいア
クションも見事に決めているものだ。
大体、プロレスなんて物は元々が見世物興行な訳だが、その
アクション・パフォーマンスを映画のプロがちゃんと演出し
ているのだから、これは面白さも抜群の作品になっている。
特に主人公たちが決める大技の数々は、それを見るだけでも
堪能できるものになっていた。
そして何より、映画の全体がアメリカンドリームなのも素晴
らしい作品だった。
出演は、マネージャー役にピーター・フォーク。そして女子
レスラー役には、ヴィッキ・フレデリックとローレン・ラン
ドン。出演当時無名の新人だった2人は、本作の後もほとん
ど出演作がなく、まさに本作だけの素晴らしい演技を見せて
くれているものだ。
他にバート・ヤング、レニー・モンタナ、ジョン・ハンコッ
クらが脇を固めている。また、映画の最初の方で2人が戦う
相手としてミミ萩原とジャンボ堀が、ゲイシャ・タッグとい
う役名で出演していた。
なお原題は、全てのビー玉を取るということで、勝負を決す
るという意味だが、映画の中で実況アナが叫ぶこの台詞が、
字幕では「雌雄を決する」となっていた。でも女子の試合で
「雌雄」はどっちなのかな。
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10月14日(日)
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